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沖田はむくれた顔をしていた。
それの原因は土方にある。
「納得いかねぇでさぁ」
「いつまでも文句言ってんじゃねーよ。さっさと隊務につけ」
しれっとした顔で沖田に告げる土方は、どこか得意げな顔をしている。
会議が終わり、ぞろぞろと他の隊長格連中は部屋を出て行った。
沖田は土方の顔を見て余計にむくれ、ダンッと立ち上がり盛大に声を張り上げた。
「なんっで!新八が土方さんの小姓なんでぃ!!!」
正確には、本日だけ新八は土方の書類整理の手伝いだった。
どうしても土方ひとりでは追いつかない書類量に嫌気が差してしまった土方は、局長である近藤に相談した。
相談内容は主に始末書やその他諸々の書類を作らなければならなくなった原因についてだ。
『近藤さん、アンタからも言ってくれ。総悟の破壊活動は最近特にひどいんだ』
『うーん…。すまんなぁトシ。だが総悟もアレは良かれと思ってやってくれてるんだ。……と思う』
『思う、じゃすまねーくらいの始末書の量になってんだよっ!』
『そーなのか?…ふむ……。確かにトシひとりじゃキツいだろーなぁ…』
『そんな事はいーから総悟の奴に改めるように言ってくれよ。アイツは俺の言う事なんか聞きゃしねー…』
『はは、言っておくよ!じゃあトシ、今日くらいはお前の手伝いで誰か1人くらいつけたらどうだ?』
『は?』
『1人でするよりも2人で処理した方が早いじゃないか。隊士2、3人は割けないが…』
『……………………いや、近藤さん。…1人で充分だ』
『そうか!じゃあ誰に手伝ってもらう?』
『………志村新八だな』
『おっ、新八くんかぁ!そうだな、あのコは将来の俺の義弟でもあるし、途中までとはいえ寺子屋に通っていたらしいしいいんじゃないか?』
『おう。将来の義弟云々は知らねーが使えるモノは使うさ』
『よし、じゃあ新八くんに俺から言っておこう!三番隊の斉藤にも言っておかないとなっ!』
『あぁ。よろしく頼む』
と、なったのだ。
隊長格が集まる朝の会議で土方の今日の予定をさらりと話していると、やはり食ってかかってきたのが一番隊隊長である沖田総悟だった。
その会話が冒頭のものだ。
「元はと言えばオメーが俺の仕事増やすようなマネばっかりするからだろーが」
「土方さんよぉ。自分の無能っぷりを他人のせいにして恥ずかしくねぇんですかぃ?」
沖田の態度は明らかに人を小馬鹿にしたような態度で、土方はこめかみに青筋を浮かべる。
だが、今の土方には何を言っても効きはしない。
「……言ってろ。もう決まった事だ。今日1日新八は俺付きの小姓、だからな」
ニヤ、と悪どい顔で笑う土方に沖田はとうとう我慢出来なくなり、どこに隠していたのかわからないバズーカを土方に向けた。
「…土方さん、やっぱり俺と新八のために死んでくだせぇ。なーに、新八と近藤さんと真選組の事は俺にまかせといてくれたらオールオッケーでさぁ」
「え…、ちょっ…、おい、総………」
「あれ、沖田隊長どうしたんですか?」
「「新八…」」
突然新八が現れ、土方も沖田も声を揃えて名を呼んでしまう。
沖田は上げた拳ならぬかざしたバズーカの行き場に困り、考えた結果……隠した。
(こンのクソガキ…!!)
土方は新八の前でのみイイコぶろうとする沖田に腸が煮えくり返る。
「お2人とも朝から元気ですねぇ。あれ、沖田隊長は朝の巡回ですよね?もう隊長の班は出払ってましたよ?」
苦笑いが癖になりつつある新八は、沖田に対して暗に仕事に行けよ、と示している。
それに対して沖田は涼しい顔をして言い返す。
「お前ぇが淹れてくれた茶を飲んだら行く。……なんでぃ、土方さんの分しか淹れてねぇたぁつれねぇ奴だなぁ新八ぃ」
新八が持っていたお盆には湯飲みが1つだけ置かれていた。
間違いなく土方の分だろう。