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□みかん食べに行きます
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請け負った依頼が終わり、帰途につこうとしていた時に依頼主が万事屋3人に手土産を持たせてくれた。

箱いっぱいに詰められたみかんを1人につき1箱くれたのだ。

神楽はもちろん、銀時や新八もかなり喜んだ。

ひとまず万事屋に帰り、新八は自宅に帰る準備をする。

「新八、夜中に雨降るらしいぞ?荷物も持ってんだし、送ってやるよ」

銀時が新八に声を掛けたが、新八は笑顔で首を横に振る。

「多分大丈夫ですよ。降るのは夜中でしょ?もうすぐ帰りますし、今のところ雨も降りそうにないですから」

外の空気は澄んでおり、雨が降る前の独特の湿気等は感じられなかった。
新八が断る理由にもうなずける。

「そーか?」

「はい。ありがとうございます銀さん。じゃあ僕そろそろ帰りますね」

「おうお疲れさん。気ぃ付けてなー」

「気を付けて帰るアル!今日はみんなみかん食べ放題ネ!」

「…神楽ちゃん、いただいたみかんは今日1日で食べ切っちゃダメだからね?」

「うるさいアル!私に指図するなこの駄眼鏡!」

「……銀さん、神楽ちゃんを見張っておいて下さいね……?」

冷え切った目を銀時に向け、神楽の監視を頼む。
銀時はかすかに震え、了解の意を示した。

「…りょーかーい…」

「ふぅ…。じゃーお先に失礼しますねー」

みかんの箱を両手に持ち、新八は階段を下りる。
少し重たいが、持てない重さでもない。

「「お疲れさーん」」

玄関まで見送ってくれる2人に笑顔を浮かべて、会釈する。
いつもなら手を振るのだが、今日は生憎塞がっている。




道中、銀時の言った通りに雲行きが怪しくなってきた。
天気予報よりも雨雲がだいぶ早まっている。

(あちゃー…やっぱり原付で送ってもらえばよかったなぁ…)

と思った瞬間にポツポツ、と雨がみかんの箱を濡らす。

「わ!わ!」

雨が降ってきた事に驚き、声に出てしまった。
雨の勢いが落ち着くまで避難出来る場所を探そうと周りを見渡す。

(あそこにしよう!)

今の時間では閉まっている店の軒先で、雨宿りさせてもらう。

雨が一滴落ちてからは早かった。
ずぶ濡れになってしまった新八ははぁ、とため息をつく。

持っていたタオルで拭ける箇所は拭こうとタオルを探したが、肝心のタオルも濡れてしまっていた。

(ツいてないなぁ…。みかんが無かったら濡れても走って帰るのに…)

みかん箱を持っているので、充分に走れない。
それに、ダンボール箱が濡れてしまったら破れる可能性もある。
せっかくもらったみかんを地面にばら撒きたくはなかった。

変に濡れてくもってしまった眼鏡を外して懐に直す。
雨に濡れた事により体温もどんどん奪われていく。

(さ、寒い!……万事屋に引き返した方が早いよなぁ…)

新八が寒さに途方に暮れていたその時、車のクラクションが近くで聞こえた。

「?」

パトカーのライトが新八を照らす。
照らされた事によって、誰がパトカーに乗っているかが新八からは判断出来ない。

運転席のドアが開きバンッ、と閉められ、誰かがこっちに走って向かってくる。
それは、



「沖田さん!」

「こんなとこで何やってんでぃ。濡れ鼠じゃねえかぃ」

走ってきた時についた雨粒を軽く手で払いながら、沖田は新八に聞く。

「いきなり雨に降られちゃって……。沖田さんこそどうしたんですか?」

沖田は濡れた状態の新八をまじまじと見てしまう。



普段ある筈の少年の本体とも言われる眼鏡が無い。
寒さで体温が下がっているせいで、いつもは明るい肌色の肌も白くなってしまっている。
心なしか唇にも色が無い。
雨に濡れた前髪が額に張り付いて鬱陶しかったのか、いつもは隠されている額が露わになっていた。

生唾を飲み込んでしまう音が新八に聞こえてしまいそうだ。

「………いや、たまたま新八くんがいたから声を掛けただけでねぃ。家に帰る途中かぃ?」
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