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□財布の次はね
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去年は財布をやった。
一昨年は…たしか……花束をあげた気がする。


もうすぐ、新八が恋人になって3度目の誕生日が来る。
並々ならぬライバル達を蹴落とし、ようやく手に入れた可愛い可愛い眼鏡の少年。

(今年は何をあげりゃーいーんだ)


「新八」

「はい?」


相変わらずお妙への愛故のつきまとい行為をやめない近藤を、土方が志村家に迎えに行っていた。
さすがに気絶している近藤を運ぶ事に嫌気が差していた土方は、近藤が目を覚ますまで待つ。


「今年は何が欲しい?」

「は?」

居間で淹れられたお茶を飲みながら、突然希望を聞く。
問われた新八はきょとん、としている。

「もうすぐお前の誕生日じゃねーか。何か欲しいモンあるか?」

「あ、そういう事ですか。別に何もいらないですよ。土方さんが大きなケガをせずに無事に帰って来てくれればそれでいいです」

ニコニコ、と微笑みながら土方に告げる。


(…あーもう!なんでこんなに可愛いんだ!?くそっ、マジで万事屋を辞めさせてぇ!あの銀髪ヤローの所に居させたくねぇ!)


もう2年以上付き合ってはいるが、一向に衰える事が無い新八への恋心に驚く。

数々の女と浮名を流してきた土方だが、実は女と1年も交際が続いた事がない。

真選組副長という立場上、いつ死ぬか分からない生活をしている。
土方自身は後腐れのない付き合いをしているつもりはないのだが、無意識に相手に対して出てしまっていたのだろう。
決まっていつも、土方はフラれるのだ。『つまらない男ね』と。
特にこちらも執着しているわけでもないしそんなに好きでもない相手なので、基本的に去る者追わずを地でいっていた。


それでも、この少年は違った。
手に入れなければ、と思った。

色々な経緯を経て晴れて恋人同士になった土方と新八は、周囲にはまったく祝福されず今もお付き合いが続行している。


「…土方さん?土方さんってば!目ぇ開けたまんま寝てるんですか?」

「あ、悪ぃ。ぼーっとしてた」

「お疲れみたいですねぇ。お仕事大変なんですか?」

「そーでもねーよ、大丈夫だ」

「それならいいんですけど…」

心配してます、という思いを全面に出して心配してくる新八が愛しい。

(コイツは来年も再来年も同じ事を言うだろうな…)


向かいに座る新八を引き寄せて背後から抱き込む。
特に抵抗せず大人しく腕の中に収まる身体も、もう何度も何度もしている行為なのに少し恥ずかしがる素振りもすべてが愛しい。




(…もう決定だろ)


「なんか変ですね?どうしたんですか?」

くすくすと笑いながら新八は、自分の腹の前で組まれた手に触れる。
その手を握り返しながら、土方は告げた。

「いや、ベタ過ぎるベタで恥ずかしいんだけどよ…」

「えー、なんですかー?そこまで言ったんだから言って下さいよ」

「まぁ……ベタっちゃぁベタだが、王道は王道だな」

「??」

いよいよ本当にわけがわからなくて新八は首をかしげる。
振り返って土方の顔を見ようとするよりも早く、土方の手が新八の顔に触れた。
そのまま後ろに振り向かされ、至近距離で見つめられてしまい新八はたじろいだ。

「…ど、どうしたんですか一体……」

「……あー、その、なんだ。
…………今年の誕生日は……俺の給料3ヶ月分のモンでいいか?」



きょとん、とした顔をしていたのは一瞬だった。
何を言われたかを自覚した新八の顔は、ボッと火のついた勢いで赤くなった。


その様を間近で見ていた土方は、笑いながら新八を抱き締め、

(コイツを置いて死ぬのは考えられねーな、ハイエナ共も残ってるし…!)

と、新たな誓いを胸に秘めていた。






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