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□春の次は夏ですね
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春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬の雪。
こうした季節を感じさせるものにふと遭遇した時はどうしようもなく気分が高揚する。
新八はまさに今、気分が高揚していた。
(わぁ…っ、すごい立派な桜だなぁ)
いつもの買い物の帰りに、たまたま普段とは違う道を通って帰ろうとした新八は、思わぬ桜の名所を見つけてご機嫌だった。
人通りも少なく、かすかにそよぐ風が桜の花びらを徐々に散らす。
その様もまた新八には美しく感じられた。
(…会いたい、なぁ)
四季の移り変わりを共に過ごしたいと思える相手が新八には、いる。
(あー、なんであの人ここにいないんだろー)
普段は隊務についているのかついていないのかよくわからない彼の人は、本当に傍にいてほしい時に傍にいない。
(まぁ…、そんなこともないんだけどさぁ!)
理不尽なことを思っている、と新八自身も理解している。
ただ、この立派な桜を2人で見て、春の到来を分かち合いたいのだ。
(よし…、探しちゃおうかな)
普段の新八ならまず思い浮かばないであろう考えも、春の浮かれた気分に流された。
彼の人の仕事の邪魔はしたくない。
彼の人はそんな事は気にしなくていいと言ってくれるが、なるべく邪魔にならないようにと考えていた。
でも今日くらいは
(別にいいよね!)
新八の浮足立った気持ちはもう治まりそうもない。
(どこにいるのかなー…)
彼の人が小休止と名のつくサボりをしている場所を探す。
いつもなら頼まなくてもすんなりと眼前に現れたりするのに、今日に限って見つからない。
(会えないってなったら……意地でも会いたくなるんだよ!)
逸る気持ちを抑えながら彼の人を探す。
(……もーー一体どこに…、あ!)
「沖田さーーん!!」
のろのろと公園から出て行く彼の人の背中を見つけて、つい大声で叫んでしまった。
「…へ?新八?」
探していた人を見つけ出せた喜びと、会えた嬉しさで新八はその場から駆け出す。
「ど、どうしたんでぃ、そんなに慌てて」