**words**
□ちょっとそこまでパトカーで
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「新八新八新八ーぃっ!」
「?」
ありえないくらいの速度でこっちに駆けつけてくる黒い塊が見えるんだけど…。
「!?」
と、思ったらありえないくらいの速度のまんまその黒い塊にタックルされた。
と、思ったら転ばないように抱きとめられた。
ありえない人物の登場に僕の視界はかすかにブレた。
「な、な、なんなんですか!沖田さん!!」
「新八!今日は何の日か知ってるかぃ!?」
え、なにこの沖田さんにしたら常にないくらいの異常なテンション。
かなり怖いんだけど…。
しかもなんか…近いしぃぃ!顔がぼやける!
いくら僕の目が悪いからってこんなに近かったら顔がぼやけるから!
「とりあえず離れてもらえますか…?それと今日は…」
「そう!今日は七夕なんでさぁっ!」
「!?」
いちいちおっきい声出すなよこのドS野郎がぁぁ!
びっくりするだろーが!!
しかも僕に答えさせる気なんか最初っから無かったな!?コイツ!
ダメだ。
これはどちらかが冷静にならないと。
そして今、冷静になるのは僕しかいない。
「そうですね、七夕ですね。で、そんなに急いでどうしたんですか?」
「新八んとこは短冊とか書かねぇんで!?」
そんな…常にないキラキラした表情のまま問い掛けられたら…ねぇ?
この人18歳だっけ?
なんだか姉上と同い年には見えないなぁ。
「いえ、万事屋で書きますよ。笹とか用意して。神楽ちゃんも楽しみにしてるみたいだし!地球で過ごす初めての七夕アルー♪って言ってました」
あ、全然神楽ちゃんに似てなかったな。反省しないと。
それにこの人、なんだかんだ言って神楽ちゃんと仲良しだしね!
ケンカする程仲がいいっていうし〜〜。
僕のこの冴え渡る勘ではこの人、きっと神楽ちゃんのこと……
「あんなチャイナの話しなんざ聞いてねぇやぃ。それ以上言ったらドタマかち割って脳みそブチ撒けるぜ?」
うん、多分神楽ちゃんの事がやっぱり嫌いなんだろう。
僕の勘ほど当てにならないモノってこの世にないしね!
「す、すいませんでした…。で、七夕がどうしたんですか?」
「今日の夜は晴れるらしいんでぃ。天の川でも見に行かねぇかぃ?」
……………。。。。
「え、僕と沖田さんがですかぁぁ!?」
わけわかんないこと言ってるぅぅ!この人、わけわかんないこと言ってるぅぅぅぅぅ!!
どこをどう考えてそうなるのかっていう経緯が知りたいよ、僕ぁ!
……あ、またこの人テンションが上がってる顔になってるしぃぃ!
にこにこ!
「そう!俺とぉ新八が!」
この人の常にないキラキラした笑顔を見て僕は目眩を覚えた。
ブルーだ。
多分今年一番のブルーさだ。まだ7月だけど。
「すいません銀さん。今日の夜、早めに帰らせてもらっていいですか?」
「別にいーけど。どした?」
「不本意ながら約束がありまして…」
本当に不本意でしかないよ…。
何が悲しくて七夕の夜に男と2人で天の川なんて見に行かなきゃいけないんだよ…。
しかも最近道端でよく会うようになってしゃべるだけで、そんなに親密度が上がってるとも思えない相手と。
「不本意ってなんだよ。なんかおもしれーなぁ。誰と?」
沖田さんと行く、なんて言ったらこの人絶対にいい顔しないだろうしなぁ。
なんだかんだ真選組は好きじゃないだろうし…。
「誰って…。言いたくありません」
「え、何それ。反抗期?女子か?女子と星でも見に行くのかぁぁぁ!?」
この人、こんなネタになったらすっごい食いついてくるから嫌なんだよなぁ…。
しかも僕の性格からして女子だったらとっくに言ってるっつーの!
そこを察して、そしてちゃんと言葉を吟味してから発言してほしいよ。
……つまり、考えてからモノを言えってのー!
「何言ってんすか。ほんと…女子だったらどんなにいいか……」
はぁ。
「なーんだ。どーせお妙かあの出っ歯の奴だろ。お前の友達ってそれぐらいしかいねぇじゃん」
「な!銀さんが知らないだけで僕ぁ友達は結構いるんですよ!それに出っ歯じゃなくてタカチンですっ!」
「タカチンだかタカチンコだか知らねーよ。…じゃあ誰なんだよ。言ってみろよー」
言いたくないって言ってんのになんで聞き出そうとするのかなぁこの人はー!?
この人絶対アレだ。
自分に娘とか出来たら絶対にウザがられるタイプだ!
神楽ちゃんに後で言っておこう。
銀さんがウザくなっても無視しないであげてって。
「なー誰だよー」
しつっこい奴だなこのクソ天パぁぁ!
多分僕が言うまでこのマダオは黙らないんだろうな……。
はぁ…。
「……たさんです…」
「え?誰って?」
「……もー!沖田さんですって!!」
「え……?」
そりゃーぽかんってするよね。
言われた本人である僕でさえぽかんってなったし。
まぁ僕はその後の混乱が凄まじかったけど。