**words**
□お金は俺が支払います
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…なんでこの人僕の前からぴくりとも動かないのぉぉぉ!?
さっき挨拶したじゃん!
こんにちはっつったじゃん!
お互いの組織としては関わりがあったのは認めるけど、個人的には全く関わってない者同士が街中ですれ違ったら軽く会釈して「こんにちは」で済ますものじゃん!!
「あの…沖田さん?」
「はい?」
「何か万事屋に御用でしょうか…?あいにく今は銀さんも神楽ちゃんもいないので万事屋にお越しいただけると助かるんですが…」
一応、なにかしらの声を掛けておかないと後が怖い気がする。この人ドSだし。
殴り合ったり殺し合ったりしたら確実に負ける相手だし。
「土方さん知りやせんか?」
「はぁぁ?」
この人こんな事を聞く為に僕の前に立ちふさがってんの!?
ますます意味がわからねー!
「いやね、俺が目を離した隙に土方が消えちまいやがってね。それでこうして団子屋で一服してから迷子の土方を捜そうと思ったんですが」
目を離した隙にって……。
土方さんを撒いたのはアンタだろーが!この税金ドロボー!
サボッてばっかりいないで少しは市民の役に立ちやがれ!
…っていう僕の気持ちが通じたのか、はたまた顔に出てしまっていたのかわからないけど、沖田さんの表情が心なしかきついものになっていくのがわかった。
こ…こわい……!
自分が青ざめる瞬間ってこんな感じなんだなー…。
「俺だってあんなヤロー捜したくもねーが今回ばかりはあのヤローがいないと現場の場所がわからねぇ。眼鏡くんもそんな顔が引きつるくらい土方の事が嫌いだからって、そんなに嫌がらないでくだせぇ」
僕、沖田さんの事なんにも知らないけど、すっごくポジティブな人なんだってことはわかったよ!
「はぁ。眼鏡くんじゃなくて志村新八です。次会った時に沖田さんが覚えてるとも思えませんが、眼鏡をバカにする発言は僕の前では控えて下さい。ブン殴りますよ。それに僕は土方さんの事は嫌いじゃありませんし。」
「…へぇ……」
「あ、すみません、全部うそです。全面的に僕が悪いです。すみませんでしたー!」
空気が!一気に冷たくなった!なんで!?もういやだ!もうここから去ろう!一秒でも早く!
「じゃあ僕はそろそろ失礼しますね!お仕事頑張って下さい!土方さんにもよろしくお伝え下さい!」
沖田さんにしゃべる隙を与えちゃダメだ!と思って一息に伝えて回れ右をした。
…はずなんだけどぉぉぉ!
「どこ行くんですかぃ?」
そのがっしり掴んでる僕の襟首を離してくれれば僕はスーパーに買い物に行けるんですがね!
なんでこんなにびくとも動かないんだ僕の足はぁぁぁぁ!!
「いやぁ、今日の夕御飯の買い物に行かないとなー…と思いまして……!」
「旦那らの?」
「いえ、今日はウチの買い物なんです。てゆーかもう離してもらえません!?」
「だって離したら眼鏡くんがどっかに逃げちまいまさぁ」
「逃げません!逃げませんからー!」
一体なんなんだこの人は!何がしたいんだよ!
あ、離してくれた。
「で、僕に何か御用なんですか?」
「土方を探してくれやせんか?」
「はぁ!?そんなの沖田さんが見つけられないんだから僕に見つけられるわけないじゃないっすか!」
なんでこう普通の人とはかけ離れてる思考を持った人達ばかりが僕のまわりにいるんだろう…。
まるで僕が異常な思考を持ってるんじゃないの?みたいな気分になってくるよ…。
……あ、そうかこの人たしかサディスティック星の王子とか言われてなかったっけ?
「違いまさぁ」
「へ…」
「俺と、一緒に、捜して、くだせぇ」
にやり、と沖田さんが笑うのがわかって背筋が震えた。
国が違うとかの異文化レベルじゃないんじゃん。星が違うんじゃん。
地球とサディスティック星の深い溝は埋まりそうもないよ。
頭の中が真っ白になっていくのがわかった。
「い、いませんねー…」
2人で捜すのなんて…なんか色々と無理があるだろ!って(沖田さんにすればかすかな)抵抗を見せたけど、ねじ伏せられた。
まともに会話なんてしたことない気まずい雰囲気のまま当てもなく土方さんを捜すなんてつらすぎる。