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□西日のプールでこんにちは
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「あっついアルー…」
今日は万事屋の定休日で、溜まってた家の掃除や洗濯を思う存分しよう!って心に決めてたんだ。
それで夜になったら、仕事終わりの沖田さんが家に寄るはずだから……何かあの人の好きなおかずでも作ろう。
と、これも心に決めてたんだけど………。
万事屋の扇風機が壊れちゃった事件で、銀さんと神楽ちゃんは志村家に遊びに来ちゃった…。
まぁ…遊びに来たというか涼みに来たって感じだけど!
もちろんウチにクーラーなんて贅沢なものは無いから、居間の扇風機をまわしてる。
てゆーかなぜ神楽ちゃんの前で扇風機の首が固定されてるのか…。
「ちょっと神楽ちゃん!僕にも扇風機まわしてよ!」
「ダメネ!私が暑いの苦手って知ってるくせにひどいアル!」
「神楽ちゃんは暑いのが苦手なんじゃなくて太陽の光が苦手なんでしょ!僕だって暑いんだから!」
僕らが扇風機の為に言い争ってると、あまりの暑さでノびて寝転んでいた銀さんがゆっくりこっちを振り返る。
…動き方がダルそうに見えるだけでなぜこうもふてぶてしく見えるんだろう。
暑さのせいでイライラしやすいのかな…見てるだけでイライラするよ銀さん…。
「おぉい、オメーらうるせぇよ。ただでさえ暑いのにもっと暑くなるじゃねーか」
「銀ちゃんは黙ってるアル!これは仁義なき戦いね!」
「なにが仁義なき戦いだよ!どーせ僕が扇風機奪われるんだからな!こんな理不尽な戦いねーだろーがよぉぉ!!」
「あーもーうるせー!!」
……ダメだ!
このままじゃ3人とも暑さとイライラにやられてしまう!
何か少しでも涼める方法を考えないと……。
「外は暑いから屋内プールとかに行きたいアル…」
神楽ちゃんがダラけたままボソッと呟いた。
…そうだ!
「姉上と僕がまだ小さい頃に入ってたビニールプールがあるんです!それに入りませんか!?」
と、途端に目をキラッキラさせてガバッと起き上がった神楽ちゃん。
「入るアル!」
と、その対極にいるであろう嫌そ〜〜な顔をした銀さん。
「えぇ〜?」
…ムカつくなぁ……。
「嫌なら銀さんは入らなくていいですよ。ねー神楽ちゃん!」
「うん!早くするアル!」
…ふふふ……神楽ちゃんはもうビニールプールに夢中だ。
なんか…銀さんに勝った気分。
「待て待て!誰も入らねーなんて言ってねーだろー?仲間外れにするなんざ銀さん泣いちゃうよ。てかそもそも3人が入れるサイズのプールなのかよ?」
…ほんと、この駄目な大人はズル賢いんだよなぁ……。
でもまぁせっかく夏だしね。
なんだかんだ僕も銀さんには甘いんだ。
「僕の記憶ではなかなか大きいサイズだったと思うんですよねー!まぁでも所詮ビニールプールですから、おっきいお風呂と思って入ったらいーじゃないですか!」
「たしかになー。外で水に浸かってるだけで気持ちいいだろーなー。
……よし、決定!」
「「やったー!」」
そこそこなサイズのビニールプールを引っ張り出してきて、空気を入れる(のは銀さんの役目)
水を貯めてる内に着替えとかタオルとか用意しとかなきゃ。
神楽ちゃんは水着なんてないから姉上の長いTシャツとハーフパンツを借りてそれを着せてあげた。
どうせ帰りはウチでお風呂に入って帰ればいーだろう。
それに、
「もしかしたら泊まるって言うかもしれないし…」
「誰が?」
「…!」
なんとはなしにつぶやいた独り言に返事がされるとは思ってなかったから……かなりビビったじゃねーかコノヤロー!
「銀さん!」
「おー。で、誰が泊まるって?」
「もーびっくりするじゃないですか。泊まるのは神楽ちゃんですよ」
僕と銀さんは男だからトランクス一枚で充分だろうということで、服を脱いでいた。
ちなみに思春期に差し掛かろうとしている少女がいるんだけど、
「なに言ってるアル!2人ともフルチンで入ってこいヨ!」
って逆セクハラ紛いなことを言われてブロークンハート。
それで僕らは丸く、トランクスに収まった。
「なに、神楽今日こっちに泊まんの?」
「いえ、まだ決まったわけじゃないですよ。神楽ちゃんなら泊まるって言い出しそうだなーと思って」
「ふーん…。なぁ俺も泊まっていい?」
「はぁ?なんでですか?」
………え、な、なんでそんなニヤニヤして近寄ってくんの?銀さん…。
「俺さぁ……」
「銀ちゃーん!新八ぃー!まだーァ!?」
「あ、神楽ちゃんごめーん!もうお水貯まったー?」
神楽ちゃんが銀さんの言葉を遮って叫ぶのが聞こえた。
うん、わけわかんない銀さんは放っておこう!
プールプール!
「………ちくしょー……。待ってくれよー」
あ、ブツブツ言いながらのろのろ追っかけてきた。
「水はばっちりアル!もう入っていい?」
「よし!オッケー!入ろう!」
僕らは浅い浅いビニールプールへ一緒に飛び込んだ!
今のこの時間帯だと、日光はもう沈みかけだから神楽ちゃんの傘はいらない。
傘の心配なんてせずに思いっ切り遊びたいよねー。
なんだかんだ神楽ちゃんが楽しそうでよかったよ僕は。
銀さんは銀さんで、まるで温泉に浸かってるオジサンみたいになってるし……。
まぁ僕もそれに近いものがあるから、今は何も言わないでおこう。
と、いきなり銀さんに腕を掴まれた。
「?、なんですか?」
「あー…いや…うん…」
天パの頭をガシガシ掻き交ぜながら言い難そうにしている。
え、なにこの人、恥ずかしがってんの…?
正直キモいな…。
「キモいです」
「ちょっ!心の中で留めておけよそーいうのはぁぁぁぁ!!嘘でも傷付くからよぉ!!」
「いえ、僕の中の混じりっ気のない真実です」
「……そーすか…」
あれ、しょんぼりしてるけど一体どうしたんだろ。
「どーしたんですか?つか腕はなして下さいよ」
「うーん…、……うわぁ、新ちゃんって腕ほせーなぁ」
カぁっチーン!
わざわざ人が気にしてることをぉぉ!
「悪かったですね軟弱で!これからガッツリ太くなっていくんですよ僕はァ!」
ニヤニヤ笑いやがって!
ちょっと自分の身体が出来上がってるからって調子に乗るなよこのマダオがぁぁぁ!!
「うんにゃ、オメーはこのままでいーって。ちゃんと俺が……」
「はーい、そこまでー。旦那ぁ、新八くんの腕をはなしてくだせぇ」