**words**

□静電気じゃないんだ
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最近、隊務中によく消える近藤を探しに志村家に来ている。


あまりによく行くものだから、嫌でも家の住人と話す機会が増えた。

と言っても、大抵近藤の目当ての人物は不在(避けられている)なので、自然ともう1人の住人である志村新八と話す機会が増えたのだ。


最初は新八の事を、万事屋なんぞ得体の知れない職に就きいかにも怪しい風貌のうさんくさい銀髪の男を本当の侍だなんだと憧れている変わった少年だ、と思っていた。

当時はそんな新八よりも、一緒にいる夜兎の小娘の方が自分の関心を引いていたのだ。



だが、こうして話す機会が増えてからは自分の中の『志村新八』のイメージがどんどん狂っていった。

今となっては、家に遊びに行ける友人のような間柄である。


新八と他愛のない話しをして、茶を出してもらってそれを飲み一緒に笑い合う。

ごくごく普通の友達のような関係を新八と築けた事が嬉しかった。

16歳と18歳の男同士で友情だなんて可笑しな感じもしたが、そんな事は気にならない。
新八も気にしていないように思う。




今日も近藤を探すついでに志村家にお邪魔していた。
案の定、庭で洗濯を干していた新八しか見当たらない。


「新八ー。近藤さん知らねぇ?」

「あ、沖田さん。こんにちは、近藤さんはまだ今日は見てないですよ」


パンパン!と洗濯物を叩いたり伸ばしたりして物干し竿に干している。

「本当にお前んとこの姐さんが好きなんだよなぁウチの大将は…」

「のんきに言ってくれますけどね…。迷惑してんですよ、アンタんとこの大将のストーカー行為!」

はぁ、とため息をつきながら新八が神妙な顔つきで言ったのがなんだか可笑しくてふ、と笑ってしまった。


「ストーカーとは言ってくれるじゃねぇかぃ。後にも先にもあのゴリラみたいな姐さんをもらってくれるっつー殊勝な男は近藤さんぐれぇだぜ?」

「そこへ直れ。人の姉に向かってゴリラとか言ってんじゃねーよ!姉上はちょっと過激なだけなんです!」


姉好き…姉依存…。
要するにシスコン度合いにも勝手ながら親近感が湧く。

自他共にドSと認める自分に対して物怖じしない話し方も関心を引いた。

今では、あの夜兎の小娘よりも新八の方が自分の興味の対象なのだ。


「わりぃわりぃ」

「全ッ然思ってねーだろアンタ!」

「ん」

「ん、ってなんだよ!認めてんじゃねー!」

「わかったわかった。そんな事よりも喉がカラカラなんでぃ。茶でも淹れてくれや」

「……はぁ…、わかりましたよ。言っときますけど、茶菓子はないですからねっ」

「へーへー」


くくく、と肩を怒らせて台所へ向かう新八の背を見て笑ってしまった。





天気が良い昼日中、男2人が並んで茶を飲む。

傍から見れば奇妙な光景だが、2人にとっては不自然でもなんでもない。
あくまでも最近の2人にはよくある光景なのだ。


ふと、湯飲みを持っている新八の手に目が行った。

同じ剣術を嗜む者として見てみれば、やけに指が細いように感じる。

だが細いが男の手だ。
男、というよりもまだ少年の手と言った方が正しいのかもしれない。

剣を握る、というよりも何かを作り出す繊細な手のように見えた。


切って殺してばかりの自分とは大違いだ。



「…いー天気ですねぇ…。ところで沖田さん。仕事戻らなくていいんですか?」

「仕事?は?何ソレ」

「…土方さんに怒られても知りませんよ」


呆れたように言う新八の首元にも目が行った。

16歳の少年の首にしたらやけに細い。
果たして自分が16歳の頃はこんなに細い首をしていただろうか?

自分も18歳にしては身の丈が大きいわけでもないし、筋肉がつきやすい身体とは言い難い。

だが、こんなにも細かったか…?



意識すればするほどに新八の身体をまじまじと見てしまう。

そして出て来た言葉は。


「…メシ、食ってんのか?」

「は?もしかしなくともバカにしてんすか?」

「じゃなくて!」
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