逆トリ!

□06日目
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骸side


僕は今、歌儚の少し後ろを歩いてます。


『はぁ…何だかマラソンした後みたいに疲れた…』


そんなに必死に僕を探していたのでしょうか?


『そういえば骸、初めの頃からさっきまで、私と同じように名前呼んでなかったよね。

私と同じ理由だった?』


「いえ、どう呼べばいいか分からずにそのままズルズルと…」

『まぁ、あんな対面の仕方したらそうなるね』


本当はそうではないんです。実際の僕は、こんな得体の知れない人間と共に生活なんてしたくない…そう、思っていたんです。

最初の対面のとき、僕は脅しなんかせずに直ぐに殺してしまおうと思っていました。

トリップがどうとかの話の時も、殺すタイミングを謀(はか)っていました。

その際、もう一つ…此処に来る前の自分の行動などを思い出しながら…

夜、僕は与えられた部屋でまずした事は“盗聴器”が仕掛けられていないか、その他の物も仕掛けられていないかを調べる事。

当たり前ですが仕掛けられていませんでした。



そして…


僕は、深夜に歌儚の部屋に侵入し、

歌儚の首に…


手をかけました。


力をかければ死ぬ。ですが…どうしてもそう出来ませんでした。

あの時、歌儚の寝言で“チ●ルチョコ”と言った時は脱力しましたが、その後に…


“骸”

そういって幸せそうに笑っていた歌儚を見て、何をしているんだろうと思いました。

歌儚が居なければ、自分は不自由な生活を強いられ、食うことに困り、犯罪を犯しながら生きていたでしょう。

向こうでボンゴレが僕に言ったあの約束…


“絶対に、もうあんな事はしちゃダメだ”


それを破ってしまうところでした。そう考えると、僕はむしろ歌儚に感謝すべきでした。そして、お母様にも。



そして今日。夕飯を食べていたとき、歌儚がお母様に呼ばれて行ったあの時…僕は“元の世界に帰っていました”

向こうでは、僕は約二ヶ月も行方不明だったそうです。

ボンゴレやクローム、千種や犬…他にも沢山の人が僕を探していたそうです。

アルコバレーノに“今まで何処に居た”と聞かれ、普通に異世界に居たと言ったときの反応は面白いものでした。

これで解決、何も問題なく帰って来れたんですが…どうしても何かが引っかかっていてモヤモヤしていました。

一週間がすぎてもそれは取れず、むしろ大きくなるばかり…任務に行ってもミスをし、危うく死んでしまう所でした。


ボンゴレは、僕にこんな質問を突然してきました。


“骸は、このままでいいの?”


その後のボンゴレの反応はどう見ても咄嗟に言ってしまったというようなもので、その場に居た守護者全員が意味が分からないといった風で…

ですが、僕はその言葉を聞き思いました。


“もう一度、もう一度会いたい…歌儚と呼びたい”



………気付けば僕は、あの時行ったショッピングモールの近くに居ました。

自分の居なかった一週間、歌儚はどう過ごしていたのか…

何も無かったかのように学校に行っているのか、それとも泣いているのか…

気付けば僕はあの家に帰ってきていました。

鍵は開いていて、僕は自分の家ではないのにヒヤッとさせられてしまいました。

リビングには僕の食べかけのご飯が…台所には洗っていないおかゆの食器が…お母様の部屋ではお母様が眠っていました。

その時、寝言でお菓子の名前を言っていた時は、歌儚を思い出しました。

しかし家の何処にも歌儚はおらず、お母様を起こし聞いてみると、僕が居なくなってから数時間しか経っていないこと、

そして、歌儚がまだ僕を探している事を聞き、急いで歌儚を探しに行きました。

途中、コンビニでお菓子を買って…


『…ろ?骸!』

「!どうしましたか?」

『呼んでも反応無かったからビックリして…何かあった?』


僕は、自分が一度元の世界に帰ったことは言わないつもりです。


「いえ、何もありませんよ。行きましょう」

『え、骸いきなり早くなんないでよ…ビックリした…』


歌儚が変に心配する事はしたくありませんからね…

……さっきの時のような泣きそうな顔は、歌儚には似合いませんから。



こうして、月明かりの下。二人は並んで帰っていった…



―終―

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