清凛学院高等部2年4組シリーズ

□異世界へようこそ
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 暖かな春の木漏れ日の中。一国の王である男は、自分よりもずいぶん小柄な青年の前に跪いた。

 上等な生地に纏われた片膝が、芽吹き始めたばかりの柔らかな草を踏む。青年は息を飲み、そんな男を見下ろしている。

 誰かに跪くなど、王を継いでからはしたことがない。けれど男に躊躇いはなかった。彼を手に入れられるならば、どんなことでも、きっとこれからもするだろう。

「ハル」

 男の低く穏やかな声が青年の名を呼んだ。

 一体、何が起きているのだろう。青年――ハルは、震える眼差しで、王である男を一心にただ見詰めた。

 何かを願うかように男は、優雅な仕草で自分の胸元に右手をあてる。そして青年の不安気に揺れる黒い瞳を、真摯な想いで見返すと、深く息を吸い込んで口を開いた。

「ハル、そなたの一生を私にくれまいか。どうか私の伴侶として、ずっと傍に――」

 全てを言い終わる前に男の頭は、ハルの腕に抱えられるようにして、その薄い胸に抱き締められていた。気の強そうな大きな瞳からは、大粒の涙が幾つも零れ落ち、それに太陽の光が反射して、まるで宝石のようにキラキラと輝いていた。

「アルッ、アルディスッ」


 ぎゅうぎゅう抱き締めてくるハルは、ただ感極まったように名前を繰り返すだけで、一向に返事を口にしてはくれない。

 困ったように眉尻を下げたアルディスは、宥めるようにハルの背を優しく何度も撫でた。

「ハル、泣かないでおくれ。どうか、返事を聞かせてくれまいか?」








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