海賊日記
□海軍本部
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約1週間ほどで、あの大きな島に着いた。
いくら私が中将という肩書きを持っているからと言って、さすがに小船での航海は辛いものがあった。
食糧は襲ってきた海王類を簡単に調理していたため大丈夫だったが、1日のうち20時間は航海のために起きていたからロクに寝ていない。
あぁ、センゴク元帥への報告を済ませたら少しだけ眠ろう。
こんなんじゃとても【頂上決戦】になんて参加できないだろうから。
そんなことを思いながら軍艦が何十隻も停まっている中をすり抜けて、海軍本部へ足を踏み入れた。
「街の者は非難勧告が出されているはずです!今ならまだ船が出ていますから、お早く・・・」
すれ違った海兵の一人に慌てて声を掛けられた。
それもそうか。今の私は海軍のマントを羽織っていない。
『悪いけど、私は海軍の者でね。通してもらいます。』
にこりと礼儀正しく微笑みを返し、そのまま厳格な建物の中へと進んでいく。
何年も歩いていない廊下だったが、なんとか迷うことなくセンゴク元帥のもとへとたどり着いた。
一度、深い深呼吸をする。
鼻腔をくすぐる和室特有の香りが、過去の私を思い出させた。
襖を挟んで「失礼します。」と声をかける。
開いた先には、真っ直ぐに見えるセンゴク元帥。その横にはガープ中将。両脇には三大将が椅子に座っていた。
こんな権力者達の中に私がいるのは確か2回目だったか。1回目は、私の“冒険”の始まりの時だった。
「**・・・!よく戻ってきた。」
「なんでも小船で帰ってきたとか言ってたけどねェ〜〜〜〜。」
「アララ**ちゃん、水臭ェな〜。呼んでくれれば迎えに行ったのに〜。」
クザンさんの言葉に少し汗が出る。
「あんまり、のめり込むなよ?」
それは以前にクザンさんが電伝虫の向こうで放った言葉。私がローをどう思っているかを見透かすような言葉だった。
そもそも、海軍大将を海賊船まで呼ぶなんてできるわけがないだろう。私の“仲間”を危険に晒すことになる。
『いえ、それくらいは自分でできるので。』
それなりの返事をし、センゴク元帥の前にノートを出した。
『これが、私の数年間の任務の結果です。お役に立てるかはわかりませんが・・・。』
「ご苦労だった。しかしここに置いておくのには危険がある。」
『・・・といいますと?』
「戦争がどのくらいの規模になるかわからん。この歴史ある建物も崩壊する恐れがある。なるべくお前が管理していろ。」
そんな無茶な。
そう出かけた言葉を寸前のところで飲み込んだ。
『わかりました。少しだけ休憩をいただいてもよろしいでしょうか?』
「あぁ。部屋はそのままにしてある。時間になったら海兵が呼びにいくだろう。」
静かに襖を閉め、少し先にある自室へと足を運ぶ。
中に入れば、以前と変わらない様子で、綺麗に掃除もされていた。
なんてありがたいことだ。
きっとガープ中将が連れてきたあの二人の雑用さんがやってくれたのだろう。
机には《掃除担当者:コビー・ヘルメッポ》という紙が置かれていた。
ノートが入ったバックを隅に置き、それをチラと見た。
よく考えれば、このノートを私が持っていることで私が自由に管理できる。このノートを燃やそうが海に放り投げようが、私の自由だ。
まぁそんなことはしない。それこそ私の記憶が消えてしまう。
とにかく、このノートはまだ私のものだ。戦争が終わるまでに、これをどうにかして・・・。
皺一つないベッドに、罪悪感を感じながらも自身を放り投げた。
沈む感覚に眠気が一層強くなり、そのまま目を閉じた。