海賊日記
□死の外科医X
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「**、話せ。」
隣に座るローにそう言われた。命令口調でも、声は優しい。
私は、震える声で、ぽつりぽつりと、呟くように打ち明けた。
『私は、人間じゃないの。』
自分でも意味のわからない言葉。それでも黙って聞いてくれるみんなに、救われた。
みんなに背を向け、正義のマントから手を離した。
露になった背中には、
「“天駆ける竜の蹄”・・・」
誰かがぽつりと言った。
みんなの方に向き直り、話を続けた。
『わかるでしょう?・・・・私は、天竜人の奴隷だった。
幼い頃、海賊に故郷を壊され、住人たちは全員そいつらによって売られた。その時、私はすでに能力者で、天竜人に高い値で買われた。
それからは暴力を奮われたり、玩具にされたり、見せ物にされたりで、生きてる心地はしなかった。
私は本当に人間なのか、って毎日のように思ってた。
ある日、私は天竜人にシャボンディ諸島に連れて行かれた。向かった先は人間屋。渡されるときに、海楼石が外された一瞬の隙をついて、天竜人と人間屋の記憶を全て消した。
そこからはもう逃走劇。あまり騒ぎにはならなかったけど、シャボンディ諸島には無法地帯があって・・・。ずっと、いろんな海賊たちや人攫いに追われていた。
そんな時に、私を救ってくれたのが、ある有名な人。その人は元海賊。
それまで、海賊なんてって思っていたけど、その人に救われてからは少し見方が変わったわ。
私は、偶然シャボンディ諸島にいた海軍中将に保護されて、そのまま海軍に入った。』
生い立ちを簡単に話した。
時々乾いた笑いが漏れるだけで、涙なんて流れなかった。
本来、私のメモメモの実のリスクで、こんな昔の記憶なんて薄れてきてもいいはず。
それが消えないのは、きっとこの背中の紋章のせい。
これがあるだけで、私の中からは決して消えない。
「脚の髑髏の傷跡は。」
ローが口を開いた。
『天竜人に売られる前に、海賊たちにいい見せ物にされていたから・・・、その時につけられたのよ。』
これもまた、私の中からは決して消えない記憶。
食堂内は、嫌に静かで、誰も口を開こうとはしなかった。
『最低でしょ?人間以下の私を、もう仲間なんて呼べないでしょ?わかってる。わかってるわ。黙っててごめんなさい。もう、私・・・』
早口で言った。
誰の顔も見れなかった。
人間以下なのよ、私は。