そしてあなたに出逢った

□海を教えて
1ページ/4ページ


「メインマストの帆をたため!」
「面舵いっぱい!」
「でかい波がくるぞ!」

『・・・。』

呆然と窓から甲板を見つめる私。


甲板には雨が強く打ちつけ、船員達は皆甲板を慌しく走り回っている。空は先程までの青が消え、灰色の雲がこの船の上を覆いつくしている。遠い遠い東の空は晴れてるのに。



「おい馬鹿女!」

荒い声がドアの向こうで私のことを呼んでいる。
っていうか、私“馬鹿女”じゃないし!!


『なんですか船長!』

「お前は使えねェから絶対ェに外に出るな!いいな!」

『使えないの知っててここにいるんですから!』


そう返せば声の主はどこかへ去っていった。
窓からその背中を見送る。
キッドはいたって普通の顔してた。キラーも雰囲気だけならいつも通り。

ってか、船長と幹部以外は皆慌ててるっつうの!なんでキッド達は普通の顔してんの!なに落ち着いてんの!ってか仕事してんの?!


私が一人でこの船の船長と幹部の動きを観察していると、あっという間に嵐は去っていった。



太陽は数十分前よりも眩しくなっている。

おそるおそる、船長室の外に出た。

船は水浸し、何かの樽は転がって破損してる物もある。波が船の上まできたのだろう、海の強いにおいがした。



「馬鹿女」
『だから、馬鹿女じゃないっつうの!』

「いいから掃除しろ。船が腐る。」
『は?』


船員たちは嵐の後でみんなびしょ濡れ。上着を脱いで、太陽に照らされながらデッキブラシで甲板を磨いている。

「なにしてやがる。さっさと行け、雑用。」

ドン、と背中を押され、近くにいた船員からデッキブラシを渡された。

振り向くと、悪魔の姿はなかった。



『はいはい。身をおかせてもらってる身分ですからね、ご奉仕いたしますよ、船長さん。』

「おい名無し!こっち手伝ってくれ!」

『はーい!』


船員の一人に呼ばれ、船尾の方を磨く。


『ねェ、なんで今、船の掃除するの?雨降ってたからそれで汚れなんて流されるんじゃないの?』

「馬鹿だなァ。わかるだろ?海水が船の上にまで上がってきたのが。」

『うん。』

「そのままにしておくとどうなる?」

『海くさくなる。』

「ハハハッ!いや、そうだけどよォ。違うんだ。放っておくと船が腐る。」


船が腐る。さっきキッドが言ってたことと同じ。


『その“船が腐る”ってどういうこと?』

「なんだァ?船のことなんにもわかってねェのか?いいか、船は木でできてる。木は海水に触れて・・・・」


数分、海水と船の関係について説明された。


『・・・じゃあ、髪が海水とか潮風に触れると痛むっていうのと同じ?』

何回も同じ説明してくれてたけど、やっぱりこの解釈しかできない。

「あァ、もういいよそれで。」

『へェー!』


なんか、船っておもしろいかも。


「よし、そろそろ終わるか。他も終わるころだろう。」
『お疲れ様!』
「あァ、おつかれ。」

『あ!ねェ、この船の航海士?って誰?』

「航海士ならドレッドだ。どうした?」

『(ドレッドだったの!?意外だな。)ううん!なんでもない。ありがとう!』


ドレッドを探すべく、船内を探し回ることにした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ