□第1章
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「しばらく恋はしない。」
部活の後輩に宣言したあの暑い夏の日。
私はあなたを初めて意識した。


「せんぱ〜い!早くしないとアップ始めますよー。」
「いまいく!」
読んでいた本を乱暴に鞄にしまい、莉唖はグランドに向かって走り出した。
その足取りは軽やかで、疲れなんてないように思えた。
その姿を見て、数少ない後輩がまんべんの笑みで待っている。
駅伝部女子部長、澤村 莉唖 中学3年生の朝はだいたいこうして始まっていた。

「先輩!朝から読書とかありえないんですけど・・。それに、この暑さでよくあんなに集中できますね。先輩の精神状態あぶないんじゃないですか?」
笑いながら莉唖に文句を言うこの後輩は、岡崎 沙奈、中学1年。同じ小学校で同じ部活だったせいか、中学生になっても変わらず仲がいい。
「うるさいなぁ。良いとこだったの。もうすこしではんにんつかまりそうだったのに。」
先輩らしくないような感じがですぎの莉唖。
ダラダラと200メートルトラックを3周アップする。
その間も後輩とくだらない話しをしていた。
これほど、上下関係がほとんど無い部活はほとんど無い。
これには、わけがあった。
私の部活、駅伝部はぶいんのかずがありえないほど少ない。
女子4人。男子10人。
3年生3人、2年生2人、1年生9人。
そして、他部活と休みがあいずらい。
イコール部活内で遊ぶことが多い。だから、先輩とも仲がいい。
と、いうわけだ。
いいのか悪いのかは別として、莉唖率いる駅伝部は、これで成り立っている。

つづく・・
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