合宿編

□合宿の王子様(9)
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『わっ!』「おっととっ」


桜乃ちゃんに呼ばれ、私達はキッチンへと戻ろうとした。

桜乃ちゃんには先に行っててもらい、姫ちゃんと二人で廊下を歩いていた。
その時に


「悪ぃ!」


誰かに正面からぶつかった。


「大丈夫かっ?悪い、急いでたから…」


『だ、大丈夫です』


地面にへたりこむ私を、心配してくれたみたいで顔を覗き込んできた。


「そっか!あ、俺もう行かねーと…」


彼はそう言って、直ぐに走って行ってしまった。




「本当に大丈夫?恵美。痛い時はビシッと言わなきゃ」


『ありがとう姫ちゃん。でも大丈夫だよ!びっくりしただけだから』

「恵美がそう言うなら…。てか、あの子どっかで見たような……」


顎に手を当てて考え込む姫ちゃんを不思議に見た後、私達はキッチンへと戻っていった。



******

「やっと帰ってきたか」


「やほー、月夜!」

「あ、姫。お前後で説教な」

「なんで?!」


キッチンに入って早々、皆から注目を浴びたけど、姫ちゃんは至って普通に挨拶をした。


『あ、あの…』


「ん?なんや??」


『遅れてしまい、申し訳ありません…!』


朝食の準備をしてくれた月夜ちゃんを横目に見ながら、氷帝の皆さんに謝罪をした。


「ああ。あんま気にせんでええよ?」


にっこりと笑った忍足先輩。


「それに、言うんなら跡部に言うたほうがええと思う」


このテーブルから少し離れた席に、跡部先輩は居た。
向かい合わせに座っているのは、立海の幸村部長だ。


『そ、それは…』

「?」


ダメだ。いや、言わないともっと駄目なんだろうけど……


『…はい、わかりました』


私は決意した。
後ろから月夜ちゃんの応援の視線に励まされ、私と姫ちゃんは跡部先輩の所に行った。



*****



『あ…跡部先輩』


「あーん?恵美か。どうかしたのか?」

『朝食に遅れて、すみませんでした』


頭を下げると、隣にいた姫ちゃんも肩を竦めてお辞儀をした。


「ふふ、跡部のとこのマネージャーさんは律儀だね」

「茶化すなよ幸村。
頭を上げろ恵美、白菊」


言われて頭を上げると、やや至近距離での跡部先輩がいた。


「遅れたことに関しては、それなりの仕事をしてもらう」


『はい…』

「…だが、それを素直に謝ることは褒めてやるよ」


くしゃ、と頭を撫でられた。


『!?//』

「恵美ちゃんは素直だね。赤也みたいだ」


『赤也…?』


くすくすと笑う幸村先輩に疑問の声が出てきたが、今はそのことは頭に無かった。


「俺のとこの部員だよ」


だが、微笑みながら言う幸村先輩に首を傾げると小さくどこかを指さした。

その指を辿っていくと、先ほど会った男の子が居た。


「あ、さっき恵美とぶつかった子じゃん」


今まで黙っていた姫ちゃんが、声を上げて言った。


「知り合いか?」

「ううん、さっき廊下でぶつかっただけだよ?恵美が」

『姫ちゃん…』


姫ちゃんの年上に対しての敬語というか、尊厳というか……
それは無いのかと少し焦った。






合宿と謝罪。
(赤也は2年だよ)
(あ、あたしらと同年代じゃん!)
(姫ちゃん…敬語使わないの?)
(あ、ごめん!なんかノリで)
(どんなノリ!?)

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