合宿編
□合宿の王子様(8)
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「恵美はさ。もし、あたしと別の人を選ぶとしたらどっちを選んじゃう?」
唐突に聞かれた言葉。
姫ちゃんとテニスをしている今日この頃。
未だに誰も起きてきては来ない午前6時30分。
『……それって』
「…なんて、言ったらどうする?」
へへっ、と笑っている姫ちゃんだけど
その表情が僅かに動いたのを私は、見逃さなかった。
「あれ、人数が少ないな」
「あ、宍戸先輩」
朝早くにキッチンへとやって来たのは、宍戸だった。
他の皆は既に起きているらしいが、各自何かしら準備しているみたいで顔を出して来ない。
「恵美は?」
「恵美なら姫とテニスやってます」
「そうか…」
優雅にお茶しているマネージャー達を見て、少しばかり驚いたが
それよりも先に、テニスをしている二人を見て目線がそっちに動いた。
*****
『どちらかなんて選べないよ』
「……え?」
パコン、とボールの跳ね返す音が辺りに響く。
『もし、選択肢が二つで、どちらか選べって言われたら悩むけど…
それが無いなら、私は両方選ぶ』
「………そっか」
姫ちゃんが何を悩んでるのか解らないけど、姫ちゃんが悩んでいるなら力になりたい。
だって、友達なんだから。
*****
「オレもテニスやってみたくなってきた…!」
午前7時。
そろそろ部員達が起きてきて、月夜達は朝食の準備をし始めた。
「桜乃、悪いけど恵美と姫を呼んできてくれるか?」
「わかりました」
「お願いな」
作っておいた料理をお皿に移し、キッチンに入ってきた人達を椅子に座らせる。
そして、座った人順に料理をテーブルに並べた。
合宿と悩み事。
(あーん?まだやってるのか)
(オレもやりたい…)
(月夜がテニスとか俺絶対相手したくない)
(よし、海斗。後でやるか?)
(嫌だって)