奇術師と私

□居候
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『はっ…はぁ…』


追い付くのに必死な私は、歩くのではなく走っている。

目の前の背中を見失わないように、前へ前へ。


『痛っ…』


何やら、ガラスらしき物を踏んだようだ。
そこで初めて気づく。


『(裸足…?!)』


今まで気がつかなかった。
今更だと思うが、ずっと路地裏など入っていたからか足元の異変に気がつかなかった。


『(どうしよ…)』


私に気づくことなく、ヒソカは前に歩いている。
このまま私が何処かに行っちゃったらどうするんだろう。
いや、その前に殺されるかも。

だけど、見失うと駄目なので
ペースは落ちるが、それでも走った。






血が、ポタポタと滴っているが気にしない。
痛みよりも
また、1人になるのが怖いから。


『(それに比べたら)』


まだマシだ。








大分歩いた所で、一つの街が見えてきた。

流星街とは違う、普通の街。



マンションなのか、一つの建物の中にヒソカは入った。


「?そんな所で何しているんだい??」


ドアの前で立ち止まっていると、不意にヒソカが聞いてきた。


『いや、あの、えっと…』


裸足で歩いていたので、足をガラスで切ってしまい血が出ている。

なので、フロントの床を血で汚したら駄目なので
入るに入れないのだ。


「……そのままでいいよ」


つい、と私の足を見た後
ヒソカは受付へと歩いてしまった。



*********




「後ろの子、ボクの連れだから」


「かしこまりました」


『っ…?』


ヒソカは、何か受け付けの人に言った後
私を、俵を担ぐみたいにして抱き上げた。

びっくりして何も言えない私を余所に、ヒソカはエレベーターへと歩を進める。


『あ、あのっ!』


「そのままじゃ、床を汚しちゃうから◆」


にっこりと、そう言われてしまえば最早何も言えない。

受け付けの人は、ご丁寧に「ごゆっくり」等と言って頭を下げていた。



『(この状態は恥ずかしいんですが…!//)』


色んな意味で、です。
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