短編小説
□GHOST
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ジュール邸の自室でイザークは休んでいた。
夜中の12時を回っており、イザークは既に爆睡している。
ふと、身体にかかる重み。そこから漂う冷気に、イザークは目を覚ます。
「…なんだ?寒い…」
冷気が来る方向、自分の腹の辺りを見てイザークは驚愕した。
「…っだ、誰だ!?」
腹の上に、見知らぬ女が乗っているのだ。しかも、あり得ないことに身体が透けている。
「…まあ、私が見えるのね…」
燃えるような赤い髪の少女は、そう言うと微かに笑った。
「な、なんだ貴様は!?何故透けている?」
「透けて見えてるってことは…わかってるんでしょう…?私は見ての通り幽霊よ」
…幽霊?信じがたい。が、確かに彼女は透けているのだ。信じざるをえないだろう。
「…幽霊が、何故ここにいる?何故、俺の上に乗っていた」
「ごめんなさいね、重かったでしょ…」
申し訳なさそうにそう言うと、彼女は続けた。
「貴方が私の生前の恋人に似てたから…つい。触れてみたかったの…。ごめんなさいね」
幽霊だから触れられないけど、と彼女が苦笑する。
「そうか…。お前は、その…いつ死んだんだ?」
「いつだったかしら。…そうねぇ、もう百年以上経つわね…」
「そんなに…俺は似ているのか?」
「ええ…とても、よく似ているわ」