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□鏡
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(あ…イザークだ。)


鏡越しに、イザークを見つけた。

見つけたも何もここは一緒に住んでいる家なのだから、いて当然なのだけど。
廊下の姿見の前を通ったときにふと見たら、リビングでコーヒーを飲んでいるイザークが映り込んでいたのだ。


ここ数日緩み始めた優しい陽射しを受けて銀髪がキラキラと輝いている。

ニュースに見入る瞳は真剣で、キリッとした印象を与える。

マグカップを持つ手は、男性らしく骨張っていながらもしなやかで。

組んだ足は長く、スタイルの良さが嫌でもわかる。


(……かっこいいな…)


悔しいほど、かっこいい恋人。
同性であるにも関わらず思わず見惚れてしまうくらいだ。

女性に人気なのも頷ける。

でも。

彼は自分のものなのだ。
イザーク本人がそう言っていたのだから間違いない。


あの優しい眼差しも、逞しい胸も、温かく包み込んでくれる腕も、愛おしむように頭を撫でてくれる指も。

もちろん。

心地好い声で愛を囁いて、熱を分けるように触れてくる唇も、自分のものなのだ。


なんて幸せなことだろう…。


鏡の中のイザークをずっと見ていたらなんだかイザークにキスしたくなってきた。

鏡に向かって唇を寄せてみる…。


(あ…)


顔を鏡に近付けることで映る角度が変わってしまい、イザークにキスできなかった。
まるで、イザークに逃げられたみたいだ。


「むぅ〜っ」


勢いよく実体の方のイザークを振り返る。
そこには相変わらず静かに座っているイザーク。


(……こっちは、逃げない…?)


思い切ってイザークに駆け寄ると足音に気付いてこちらを振り返った。
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