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ガキの頃、ほんっとに薄れた記憶の中…


部屋に漂ってくる美味しそうな匂いをたどり、俺は台所に来ては
母の背中を見つめていた。

『もう少しで出来上がるから』と
母は笑って俺の頭を優しく撫でる。


母の手は一種の『 芸術 』だと、
俺は思う


母にかかれば、どんな食材でも
あっという間に美味しく彩る


一度だけ、
父にも何か作ってほしいと頼んだ覚えがあるが、母には敵わないぞ?と言って、オムライスを作ってくれた。

確かに、
アレは二度と食べたくない味だったな



でも…

あの彩る食卓も
母の背中も
父の不味い飯も



二度と拝むコトはない















「………確か、こんな感じ…か?」



何をとち狂ったのか
俺はいつの間にやらアジトのキッチンで包丁を手に、食材を切っていた。

次にフライパンやら鍋やら取り出して火にかけて…


あっという間に料理を完成させていた


作り終えて数秒の思考停止

俺は何をやってんだ…?





「 あれっ!?サソリの旦那じゃねーかよ! 」

「 ! …デイダラか 」



キッチンに現れた俺の相方は
心底驚いた、とでも言いたげな顔を俺に向けてきた。



「なんだそのアホ面は。喧嘩売ってんのか?」


「い、いや…
旦那が料理してる姿とか初めて見た!うんっ」



『明日は雪か!?』とか抜かしやがるから、包丁を投げつけてやったが避けられた
………チッ


何しに来た、と聞いてやったら
腹が減ってたトコロ、アジトを徘徊してたら旨そうな匂いがしたから来た、とのコト。

いつぞやの俺みたいなコトしやがって…



「なぁ…旦那、1つ聞いていいかぃ?
そ、その料理…」グキュルルル〜ッ


「あ゛ァ?食いてーなら食えっ」

「 いいのか!?旦那サンキューな♪ 」



どうせ俺は食えねーし
それに、味の保証だって…



「 ………美味い
旦那!コレ美味いぞ!?なんて料理だぃ?ぅんっ」


「 は? 」



母がやってたようにと真似しながら適当に作ったのに、まさか美味いと言われるとは…




「旦那とは価値観は違うと言えど
まさか料理の腕まで芸術とはな!うんっ」


「 っ!? ……くだらねぇコト言ってねぇで、さっさと食えっ」




何気ないその一言が
素直に嬉しかったのは内緒だ






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