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□#関係の始まり
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攘夷戦争も終わりを迎えていた。親しんでいた同輩は、次々と俺の前から姿を消した。
俺は一人だ。
産まれた時から俺は一人だった。親の顔はおろか愛情すら知らずに今まで生きてきた。どうやら人を引き付ける力のある俺は、友には恵まれていたが、その友すら、今は……。
そうだ。俺は一人だ。友の仇以外もう何も残っちゃあいない。
「……。」
ふと視線の先に、すらっと立つ長髪の男が映った。
それからのことは覚えていない。気付くと俺は、その男の両手首を片手で壁に押し付け、もう片方の手で無理矢理男の顎を固定させていた。
「――!!何をするんだ!」
「そうだよ。まだお前がいた……」
そう言うと俺は男に深く唇を重ね、懐に手を侵入させ、小さな突起物を指先で撫でた。
「っはぁ、はぁ、……何をしている、とうとう頭がいかれたか」
意外にも落ち着いた声だった。その声に俺は妙に安心したようだ。男をきつく抱きしめた。
「わりぃ……」
「ったく、お前らしくないではないか」
俺が求めていたのはこれかもしれない。言葉無くとも通じ合える「ひと」が、今、俺の腕の中にいる。
俺はもう一度、次は触れるだけのキスをした。男は俺の背中を小さく握り返した。