花には水を僕には愛を

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「あの・・えっと、これに乗るんですか?」



あのあとたまり場に案内するといって校門まで連れてこられた琉依は、目の前にある高級すぎる車を見て思わず尋ねた。


「そうだよ。さあ、琉衣ちゃん乗って」


あいもかわらずにっこり微笑みながら促す奈緒。さも当たり前に言うものだから、琉衣はKというものがなんなのかいまいち分からなくなってきた。なぜこんな車を持っているのだろうか。


促されるまま車に乗りこんだ琉衣は初めて乗った高級車に驚く。

―――・・・わっ、ふかふか!

バタンッ


良い乗り心地にうかれていると、横に誰かが乗ってきた。そっと横を見てみるとそこに乗っていたのは恢斗だった。

「むッ」

先ほどの態度で少し苦手意識を持っていた琉依は心の声をつい口にしてしまう。それに対して恢斗はちょっと不機嫌そうに言った。



「何か文句あるのか。」

「い、いえ別に・・」


ズシッと車内の空気が一気に重くなった。


―――・・もうっ私のバカッ


琉依は口の軽い自分を叱咤した。


「ごめんね、琉依ちゃん。待たせちゃって」


そんな中車に乗り込んで来たのは奈緒だった。


「ちょっと時間かかるんだけど我慢してね」

変わらずにやさしく微笑む奈緒に琉依は安心する。

「はい、大丈夫です」


そんな奈緒を見ると、出会ってから一度も笑わない横の人も笑えばなぁ、なんて思ってしまう。


――・・・せっかく整った顔してるのに・・。



そんな物思いにふけていると、不意に運転席に目がいった。運転手席に乗っている人はあからさまに制服を着ている。いったいいくつなのだろう、と琉依は思い思い切って聞いてみた。



「あの・・、先輩なんですか?」

「・・・・」

しかし運転手席の男は答えない。



「あの・・・」


そこでどこかに電話していた奈緒が気づく。
しかし恢斗は以前窓の方を見たままだ。


「ん?琉依ちゃん、どうかした?」


「い、いえ運転手の方にちょっと聞いたんですけど・・・。」

そういうと奈緒はああ、と言って運転席の男に話しかける。



「哲、琉依ちゃん話しかけてるのに無視しちゃダメだろ」


そこで男はあわてたように言った。


「お、俺ですか!?」

「お前以外にいないだろ?ごめんね琉依ちゃん。こいつ少し天然なんだわ」


すこし呆れたようにいう奈緒に琉依はすぐさま言った。


「いえ!運転中いきなり話しかけてこちらこそごめんなさい。え、と哲さんは先輩なのかなぁ、と思ったんです…」

そう聞くと哲という男はあたふたしながら答えた。

「そうっす。普通科の三年です。でも一つダブってるんで雨宮さんよりも3つ上ってことになりますね。」


金の短髪にサングラスをしている哲は見た目に似合わず丁寧な話し方で答えた。

そこで琉依は、ハタと気づく。



「ごめんなさい。自己紹介まだでした。私は音楽科1年の雨宮琉依です。よろしくお願いします。」


そういってペコッと頭を下げる。
するとまたあわてて言った。


「雨宮さん!頭下げないでください!」


「あの・・さんづけでなくていいですよ。」


「そういうわけにはいきません!」


哲は今日一番のはっきりとした声できっぱりと答えた。


「むしろ俺にさん付けしなくていいっすょ。哲って呼んでください。」


「先輩なのにそういう訳にはいきませんよ」


そこからしばらく二人はいやいや、と押し問答を始めた。しばらくしてこれではきりがないと思った琉衣は提案をした。


「じゃ私は哲くんと呼ぶので哲くんはちゃん付けでもいいので琉衣ってよんでください」


その言葉に哲は頷く。


「では琉衣ちゃんと呼ばせてもらいます」



その言葉に琉衣はにっこりと頷き和やかな空気が流れた。




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