企画モノ

□隣の駅の他校生
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溜め息を吐きたくなった、刹那。ギシッと、軽く鳴ったスプリング。不思議に感じて見上げてみれば。いつもの、ミルクティー色の彼。



「お隣、失礼させて貰うで」

「え…、…っ」


初めて聞いた、彼の声。爽やかで、優しくて。とても、彼に合っていた。

2人掛けの椅子の、すぐ隣に。彼が居る。思ったよりも彼は肩幅があるらしい。制服を纏った腕が、少しだけ触れあって。そのじれったい感覚が、異常な程にに私の体温を上げた。


ガタンゴトン、と。電車が揺れる。穏やかに、緩やかに。その中でも、触れ合った腕の暖かさだけが、際立って。車体が揺れる度に、心臓がバクバクと音を立てる。いつもよりも静かな空間が、余計に意識させられた。


「いつもこの電車に居るよな、自分」


静かな空間に、唐突に彼の声が響く。ちら、と見上げた彼はしっかりと私を見ていて、少しだけ慌てた。視線を彷徨わせながら、口を開く。ああ、喉がからからだ。


「う、うん…」


しかし、出てきた言葉はたった一つ。ああ、彼がせっかく話し掛けてくれたというのに。気を悪くしては居ないだろうか。


「いつも同じ席に座っとるよな。目が合うてもぎこちないさかい、気になってん」

「え…、あ」


けらけらと。あっけらかんと笑う彼だが。私は若干虚しく感じた。やはり、彼の眼にはぎこちないと思われていたらしい。変な子だと、思われては居ないだろうか。そればかりが気になって、ゆっくりと視界が霞む。

俯いて、スカートを見る。顔が上げられそうにない。彼は今、どんな表情をしているのだろうか。ガタン。大きな音を立てて、車体が揺れた。


「まあ、そんなん建前で。…ホンマは」


それだけ呟いて、立ち上がる彼。どうにもキリが悪い言葉だ。しかし、何処からか下車駅のアナウンスが流れている。どうやら、目的地についたらしい。では、これで終わりなのだろうか。

プシュッ、と。ドアが開く。


「えらい別嬪さんやから、つい気になってもうてん」

「―――え、」


「これからも毎朝宜しゅう。勝手に電車、変えたらアカンで?」


そう、残して。ドアの向こうへと流されていく彼。その背中をぼんやりと見つめて。しかし頭の中は真っ白で。どうにも、彼のセリフが理解できそうにない。彼の、爽やかで優しい声には似つかわないような、含んだような笑みに。あの、セリフに。未だ、高鳴りが止まない。


「お客さん、終点ですよ?」


不思議そうな表情で私を見る車掌さんが。視界に映ったところで、私の思考は現実に戻ってきた。そういえばこの電車はこの駅が終点だった。そんな日々の当たり前ですら、忘れてしまうほどの衝撃を、私は未だに味わったことがない。

ゆっくりとした足取りで、ホームへと降りる。ホームには人が疎らに居て、常のままの様子だった。夢だったのかもしれない、と。ぼんやりと考えたが、頭を振った。この頬の熱は、決して幻ではない。初夏にしては、少しだけ涼しくも感じる風が、頬を撫でた。



どうやら、私は。名前も知らない彼に、本気で堕ちてしまったらしい。



隣の駅の他校生
(そして私は、また)
(期待と共にあの電車に乗る)




***
名前変換が無い…だと!?(^言^)


初めてこのタイトルを見た瞬間、「隣の駅ってなんぞ」と思ったバカはこの私です。正直、設定が掴みにくい文になってしまったと思います。というか、夢にきちんとなってますか、これ。なってませんよね、これ←


リクエストしてくださいました、リン様!七万打企画ご参加ありがとうございます!こんなにも拙い文章ですので、ご所望でしたら書き直しさせていただきます!お気に召していただければ、幸いなのですが(´・ω・`)愛だけは込めました
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