人を恋ふ。

□02
1ページ/1ページ

人が落ちていた。何の比喩もなく、事実として。庭先にある、大きな木の根本に。まるで寄り掛かるかのように、人が倒れている。

男性、なのだろうか。薄い茶色の髪に、異国の物と思われる服装。少し離れていても、整っている顔立ちなのは、見てとれた。


しかし、神無月も近付いているこの季節。あんなにも薄着では寒いだろう。私は袿を幾重も重ねているというの、に。

私は一番上に羽織っていた袿を脱いで、彼の身に掛けた。女物ではあるが、美しい女郎花色の袿は、彼に良く映えた。紅葉が舞う中に眠る姿は、酷く美しい。


「紅の、色付く時雨、揺らす風、異端な様にも、秋を纏わせ」


どうにも、その姿に。秋を感じられずには、いられなかった。全てが秋味であるのに、あの空間だけ何かが違う。それなのにどうしても、その異端さが、酷く似合っていた。

ふわり、と。秋らしい風が、身を包み込んだ。少しだけ、冷えてきた。あの人は、寒くはないだろうか。と、近付いて、その表情を見つめた。かさり、と木の葉が音をたてる。


見れば見るほどに美しい、否。麗しい、人だ。あまりにも中性的な顔(かんばせ)に、長い睫。さらさらと風に踊らされている刈安色は、高級な生糸にも劣らないだろう。

しかし、微動だにしない所を見ると。まるで眠っているかのような様だが、気を失っている、の方が正しいようだ。生気が感じられない姿に、思わず。声を上げて、人を呼んだ。



「誰か!誰かこちらに!」








***
やっぱり名前変換が無い。←

ううむ、やはり歴史モノは難しいッスねー。カタカナ使えないし、史実があるけど、既出の物が在る訳じゃないし。(´・ω・`)

女郎花(おみなえし)色:黄色
袿(うちかけ)


20120923

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ