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□俺様カレシ。
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「、…っはあー」
バタン、と大きな音を立てて、遠慮無しに大きなベッドへ倒れ込む。跳ね返ってくるスプリングはとても品が良く、我が家のそれよりもずっと寝心地が良かった。
「、ねえ。誰の部屋か判ってるの?」
「はいすみませんでしたっ!」
頭上から聞こえた、酷く笑顔な表情とは裏腹な低い声に。文字通り飛び起きて答える。彼を怒らせると、非常に後が怖いのだ。
起き上がってベッドを降り、床にペタンと座り込む。正直これ以上立っているのは辛い。なにしろ、先程まで7時間立ちっぱなしだったのだから。私のバイト先は、接客業なのだ。
「高々7時間でバテたのかい?」
「あのねえ!天下の立海テニス部部長さんとは体力が違うの!」
「そんなの当然だろう?」
しれっと、しかし薄く笑んで言う彼に若干の苛立ちを感じた、が。だからと言って、言い返した処で敵うはずがない相手だ。余計な波は立てたくない。
だいたい、だ。あのバカみたいにキツいと有名な(一部では朝練だけで消費カロリーが3000キロカロリーはあるという都市伝説まで流れる程)練習を毎日こなしている彼に、体力で敵うはずがないんだ。
論争は諦めて、溜め息と共に深く項垂れる。座り込んだ床は酷く冷たくて、心地良い。
「そんなに疲れるの?」
「まあ、中心部だからね…」
「ふーん?まあ、頑張って」
さも、どうでも良さげな彼は。どうでも良さそうに言葉を吐き出す。目線すら、微妙な位置に漂っている気がする。
「なに、それ!もう少し優しく、とかないの?」
「無理。第一バイトはお前が好きでやってるんだろ?」
「そ、うだけど!彼女に対して優しくとか!」
「―――…はあ、煩いな」
せめてもの抵抗で叫んでみれば。彼は酷く面倒そうな表情で、溜め息を漏らした。
そのまま、近づいてくる藍色は。私の目の前にくると乱暴に顎を掴み、持ち上げた。私の意思とは裏腹に上げられたせいで、筋が嫌な音を立てて、鈍く痛んだ。
それでも。彼はお構い無しに、薄く笑む。
「黙って俺に貢げよ」
―――ああ、なんてやつなの。
でも、思わずときめいた、だなんて。私も大概、どうかしてるかもしれない。
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こう言われたいのは私です^^^