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□きっかけ
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きっかけは1つの飴玉。


それが、今に繋がっている…。




「なぁー、飴くれぃ」



にかっと白い歯を見せてはにかむ、目の前の少年。
その言葉に溜め息を小さく漏らす。


「自分で持ってきてよ…」

「無理だぜぃ」

「なんでさ。
いっつもお菓子持ってんじゃん…」

「荷物増えるだろぃ?」

「……。」


こいつは…。

「じゃあ、今度から持ってこない…」



「え゙っ!駄目っ!!困るっつうのっ…!!」


「知るかっ!!」


怒鳴ってみせれば、
目に見えて縮こまるブンちゃん。


「本当、甘いもの好きだよね……」




「甘いのだけじゃねーよい……」


「―――え?」

小さく呟いた声を聞き取れず、思わず聞き返す。


「んでもねーよぃ」


ブンちゃんはそのまま拗ねてしまった。


「ブンちゃん?飴あげるから、機嫌治して…?」


まるで小さな子供をあやす様。


「まじかっ!?」


「うん。ほら…」



そういって、赤い飴玉を差し出す。
機嫌は治ったのか、飴玉を握り締めるブンちゃん。


単純…(笑)


「あ、あのさっ!!」


「……ん?」



ブンちゃんが何かを訴えようとする。


「俺…その…えっと…!」


「……?」


ブンちゃんの飴玉を握る手が強く拳を作る。



「俺っ!お前の事がっ『丸井――!!ちょっと良いかのぅ!』……っ!?」


ブンちゃんの言葉に仁王の声が重なる。


「仁王、呼んでるよ……?」



「あんの野郎っ!!」


そのままブンちゃんは走って行ってしまった。



ねぇ、
さっき何を言いかけた…?



あたしの、
勘違いかなぁ……?


「いやぁー、すまんのぅ」


ニヤニヤしている仁王。
間違いねぇ。
こいつっ、確信犯だっ!!


「てめぇなぁっ!!」


「ん?なんじゃよ……」



目で茶化す様に、俺を見る。



「お前のせいで…またタイミング逃しただろうがっ!!」


「すまんのぅ〜」

ケラケラ笑ってやがるし…。



あー
俺いつになったら、
告れんだろ……


「まぁ、頑張りんしゃい」




「くっそぉ―!!」



ブン太の葛藤のゴールは、
もうすぐ側だという事はまだ気づいていない。


+END+

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