10万ヒット記念小説
□Lightning WARS〜ぼくたちの友情〜
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―2013年 お台場サッカーガーデン シーサイドグラウンド―
「雨強くなってきたわね…」
手をかざしながらさくらは分厚い雲におおわれた鈍色の空を仰いだ。
30分ほど前から降り出した雨はやむ様子もなく、むしろ時間と共に雨足を強めていた。
ここ最近はブラックルームにこもり切りだったので、たまには気分を変えて外で練習することにしたのだが、どうやら裏目に出てしまったようだ。
「…ヘキシッ!」
「鉄角くん、大丈夫かい?」
「ああ。風も冷たくなってきやがったな…」
ズズッと鼻をすすり頭を軽く振って水を落とすが、すぐにまた新しい雨粒が頬を伝わりアゴから滴り落ちていく。
真名部はレンズに付いた水滴を払い、九坂は髪が顔にあたらないようしきりに触っていた。
「キャプテン、今からでも室内練習にした方がいいんじゃないかな?みんなイマイチ集中できてない感じだし」
そう言って瞬木が天馬に近づいてきた。
瞬木自身はさほど雨を気にしていないようだが、それでも前髪から水滴がポタポタと流れ落ちているのを無意識に目の端に入れているようだ。
「神童さん、戻った方がいいでしょうか?」
「…なんとも言えないな。ここがサッカー部ならもう少しひどくなるまで誰も練習をやめないだろう。だがまだ基礎体力に不安が残るメンバーもいるし、無理をして体調を崩しては意味がないしな」
「試合も近いですしね…」
言いながら天馬はみんなを見回す。
瞬木の言うとおりみんな練習への意欲は見せているものの、やはりどこか気もそぞろでいつもの雰囲気と違う。
眺めているうちに『キャプテンが切り出してくれれば』と無言で訴えているようにさえ見えてきた。
「じゃあ、このドリブル練習が終わったら…」
みんなの気持ちを汲んであげよう、そう思い練習の切り上げを言い出そうとした天馬だったが、すべてを言うことができなかった。
天馬の言葉を待っていたかのように急に雨の勢いが増し、叩きつけるようなものに変わる。
「うわっ…マジかよ!」
「め、眼鏡がくもって見えません!」
グラウンドは軽いパニックに陥った。
遠くでは雷も鳴り始め、風も強まってきている。