1号

□心の迷路で迷ったら
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気が付いたら暗闇の世界に一人佇んでいた。

「ここは…?」

不思議そうに辺りを見回す。
しかし視界には黒一色が広がっているだけで、音も自分の声が反響するのみである。

「待て」

取り敢えず歩きだそうとした時、後ろから引き止める声がした。
驚いて声の方に振り返る。

「佐久間…源田…!」

目を見張った。
そこには二人の旧友が立っていた。

「オレたちが病院で苦しんでるって言うのに、良い身分だな」

「なっ…!」

二人のうちの片方から低く冷たい声が発せられる。

「あなたには絶対分からないでしょうね。オレたちを見捨てて雷門に行ったあなたには」

もう片方が濃橙の瞳を寂しそうに伏せる。

「違う!おまえたちを見捨てた訳じゃない!オレは…チームメイトを助けられなかった自分が許せなかったんだ…。だからっ…!」

「綺麗事を言うなっ!あの世宇子に勝ちたかっただけだろう!おまえが欲しかったのも強さだ!」

「クックック…違(たが)ったな。おまえが下らない反抗心など抱かなければ、あいつらも無事で済んだものを」

「何っ…?」

声の方に振り向く。
そこには黒ずくめの大人が立っていた。

「そうだろう?おまえがわたしの元を離れなければ、あいつらが世宇子に敗れる事も、禁断の技で体が壊れる事もなかった」

「っ…!」

「今までわたしが手掛けた最高の作品を教えてやろう。それは鬼道…おまえだ」

「違う…」

必死で首を横に振る。
大人はスッと手を伸ばした。

「鬼道、もう一度わたしの足元に跪け。おまえとわたしは同じなのだから」

「違う!オレは…オレはっ!」


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