4号

□早く同じフィールドで
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廊下にオレの足音と荷物同士がこすれる音が響いている。
息も大分切れてきた。
当たり前か、両手も鞄の中もみんなから預かった見舞いの品で溢れてるんだからな。
これだけの量、天馬たちが手伝いを申し出てくれたけど、オレはそれを全部断った。
あいつとは一度2人でゆっくり話がしたかったから。
まあ、まさかこんなような状況になるとは思ってなかったけど。

「ふぅ…」

部屋の前に着いて一息つく。
扉の横のプレートには“410 神童拓人”の文字。
やっと着いた。
そう言えばこのプレートを初めて見た時、狩屋が『4と10で神童の語呂合わせみたいですね』なんて言ってたな。
今言うことじゃないだろ、って思ったけど、そのお陰で少し場が和んで、神童にあんまり情けない顔見せずに済んだんだ。

「神童」

両手が塞がっててノック出来そうになかったから、扉に顔を近付けて神童を呼ぶ。
すると、部屋の中で人が動く気配がした。

『その声、霧野か?』

「当たりだ。入って大丈夫か?」

『ああ』

了承を得たので手提げ袋を掴んでいる手から小指だけを離して、なんとか扉を開ける。
開くに連れて、神童の緩やかなウェーブが掛かった灰茶色の髪が見えてきた。

「随分と大荷物だな」

部屋に入ると開口一番笑い混じりにそう言われた。
自分でもそう思う。
だってちょっとした家出するやつみたいな格好だから。

「みんなからのお見舞いだ。昨日、オレが明日神童の所行くって言ったらこれ持ってってくれ、あれ持ってってくれ、ってなってな。気付いたらこの状態だった」

「ははっ。そうか」

神童はオレの姿を上から下まで眺めてまた笑った。
その笑顔は、前と全然変わってない。
ちょっとだけ、安心した。

「調子はどうだ?」

「少しずつだけど良くなっている、と医者は言っていた。あんまり動き回ると大人しくしてろ、って注意されるから実感沸かないけどな。隠れて上半身の筋トレとかはしてるんだけどさ」

「あんまり無茶するなよ。今は医者の言うことちゃんと聞いて、安静にしてないと」

「わかってるさ」

神童はそう言ってオレから目を逸らして、ベッドの脇にあった椅子を引っ張りだそうとする。
荷物を一旦床に置いて自分の足に寄り掛からせて、途中から手助けしてそれに座った。
神童のやつ、口ではああ言ってるけどわかってないんだろうな。
気持ちはわかるけど、治りが悪くなって辛い思いをするのは神童なんだぞ?
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