5号

□ワンウェイラブアロー
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雷門中サッカーグラウンドにホイッスルが3回鳴り響いた。
試合終了の合図だ。

「っした!」

両者頭を下げ自然とスコアボードを視界に入れる。

「やっぱ強いよなぁ。何人かこっちに入ってくれても2点差か」

「半田センパイ、ポジティブに考えましょうよ。何人かこっちに入ってくれたから2点差で終わったんですよ」

「…少林、それ言っててむなしいだけじゃないか?」

「いや、半田も少林もみんなも前会った時よりすっげえ上手くなってるぜ?やっぱり努力は絶対に裏切らないんだよ!」

「ううう…久しぶりのキャプテン節だぁ〜」

「宍戸?泣くほどのことでやんすか?」

そんなサッカー少年たちの会話をマネージャー4人は少し離れたところで見ていた。
彼女たちの名誉のために言っておくと、もちろんドリンクとタオルの準備をしながらだ。

「え、円堂くん!はいこれっ!」

「おお、サンキュー夏未!」

夏未からのドリンクとタオルを笑顔で受け取る円堂。
途端夏未のほおが赤く染まる。

「夏未さんとキャプテン今日もラブラブですね!」

「本当。なんだかこっちまで恥ずかしくなっちゃうね」

「ええ。マモルくんはいつも通りみたいだけど」

ベンチに戻ってきたメンバーにドリンクとタオルを渡しつつ3人は会話を続ける。
すると無事円堂に渡すミッションをクリアした夏未が足早に戻って来た。
さっと3人の後ろに隠れると深いため息をつく。

「はぁ…緊張した」

「ええ?今更ですか?付き合いだして何日経ってましたっけ?」

「何だか片思いだった時より顔がまともに見られなくなってしまったのよ」

「なるほど、オトメゴコロは複雑ってやつですねぇ」

女子会全開の会話にどう反応していいかわからない男性陣。
そんなことを気にする様子もなくトークは続く。
すると冬花が思い出した、というように口を開く。

「そう言えば春奈さん。あの観光客の人とはどうなったの?」

「あの観光客?」

「ほら、ジ・エンパイア戦の少しあと、日本人の人に付き合ってくれって言われてたでしょ?」

ざわざわとした空気が広がった。
しかし当の春奈はきょとんとした顔をしている。
数秒後ああ、と手を打って話し始めた。
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