5号

□ツルギキョウスケ
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今日のリハビリを終えて、オレはベッドの上でサッカーマガジンを読んでいた。
最近は松葉杖があれば大分歩けるようになったけど、支えがなければ10メートルももたない。
…まだまだ先は長いな。
そんなことを考えていたらバタバタとうるさい足音が聞こえてきた。
ここの階はオレと年が近い人しかいないから走り回るような子供はいないと思うんだけど、誰かの子供さんかな?
だけどその足音はだんだん近づいてきて、この病室の前で止まった。
まさか…。

「兄さんッ!」

「京…介?」

ノックもなしに勢いよく開けられた扉の向こうには京介が立っていた。
どれだけ全力で走ってきたのか、京介は肩で大きく息をしていて呼吸もジャージも乱れている。
いや、そこは問題じゃない。

「京介、どうしたんだ?宇宙での試合は…」

「……ただいま」

「…え?」

「今帰ってきたんだ。兄さんに…一番に…伝えたくて」

息を整えながらもそう言って京介は笑った。
一瞬何がなんだかわからなくて京介の言葉を頭の中で繰り返す。
2、3回繰り返してようやく思考が追いついた。

「…おかえり、京介!」

オレが思わず手を伸ばすと京介が近づいてきてくれて握り返してくれた。
その時無意識に手を自分の方に引いてしまったみたいで、バランスを崩した京介がオレの上に倒れこんだ。
途端京介の肩がビクッと動いたのがわかった。

「ッ!ごめん兄さん!大丈夫か?」

「大丈夫だよ。オレのほうこそ急に引っ張ったりして悪かった」

本当に大丈夫だから、と立ち上がろうとした京介の背中をポンポンと叩くと、京介はもう一度謝ってゆっくり立ち上がった。
…まだ申し訳ないって顔してるな。

「兄さん、どうかした?」

「ん?いや、おまえは変わらないなって思ってさ」

「そうか?自分じゃわからないから。…でも、兄さんがそう思うならそうなんだろうな」

自己完結してしまった京介に思わず笑いそうになった。
でも安心した。
宇宙で異星人とサッカーするなんて普通ならありえないことを経験したら、京介が変わってしまうんじゃないかって不安だったんだ。

「帰ってこれたってことは、宇宙は救われたんだな」

「ああ。みんなで力を出しきってなんとかな」

「そうか、よかった。…ははっ、訊きたいことが多すぎて何から訊けばいいかわからないな」

「それはオレも同じだ。話したいことがたくさんあるんだ」

「ゆっくり聞かせてもらうよ。時間はあるんだから」

そう。
もう京介は元気だろうか、ケガをしていないだろうか、って心配しなくてもいいんだ。
京介は地球を、宇宙を救うために選ばれたんだから、オレはここで帰りを待つって決めた。
京介が決めたことを止めるつもりも権利もなかったから。
だけど本当は心配で、1日でも早く元気な京介の顔が見たかった。
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