5号

□時には甘えて?
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「…?」

1限目の準備をしようとカバンから教科書を出していたら見覚えがないノートが入っていた。
取り出して中を何枚かめくってみたら、すごく几帳面な字で書かれた数学のノートだった。

(この字は…神童センパイか?)

作戦を説明してくれる時のホワイトボードで何度か見たことがあるから間違いないと思う。
問題は何で神童センパイのノートがオレのカバンに入ってるかってことなんだが…。

(もしかして…)

オレは昨日のことを思い出す。
それは部活終わり、浜野センパイと天馬が明日提出の宿題が終わらないと言うので、浜野センパイは神童センパイが、天馬はなぜかオレが教えることになった。
その時それぞれのノートや教科書を1つの机の上に置いていたから、オレが間違って神童センパイのノートを自分のカバンに入れてしまったんだろう。
すぐに返しにいかないと、と時計を見たら今からじゃどう頑張っても間に合わない。
このノートが無くてセンパイは困っているかもしれないが、次の休み時間に返しにいくしか方法がないな。
神童センパイのクラスの1限目が数学でないことを祈ろう。

*****

休憩時間、オレは2年生の校舎に向かった。
1つ学年が違うだけなのに、上級生の校舎はなんとなく緊張する。
足早に神童センパイのクラスに近づくと、入口のところで喋っていた女子2人がオレに気づいた。

「キミ、たしかサッカー部の剣城くん…だよね?」

「はい。あの、神童センパイいますか?」

「神童さま?い、いるけど…」

「そうですか。すみませんが呼んでもらえますか?」

「わ、わたしたちが!?」

オレと神童センパイを交互に見て不自然に目を動かす2人。
…そうか、この人たちも茜さんと同じ部類の人たちか。
だったら神童センパイになかなか話しかけられないんだろうが、休憩時間は長くないからあまり躊躇っていてもらっても困る。
大声で呼んでしまおうかと思っていたら、センパイが気づいてくれてこちらに来てくれた。

「剣城、どうかしたのか?」

「これ、神童センパイのノートですよね?」

「え?…ああ、たしかにオレのだ。よかった、家にも机の中にもなかったから部室に忘れたと思っていたんだ」

「…すみません。昨日間違えて持って行ってしまったみたいで。今の時間大丈夫でしたか?」

「ああ、1限目は国語だったからな」

よかった、オレのせいで神童センパイの勉強に支障が出たら困るからな。
オレからノートを受け取るとセンパイはフッと笑う。

「そんな顔するな。仮に今の時間が数学だったとしても、別の教科のノートに取ればいいだけなんだから。…でも、ありがとう。助かったよ」

言葉と共に神童センパイの手がオレの頭に延びてポンポン、と軽く叩かれる。

「じゃあ、またあとでな」

「…あ、はい」

オレが返事をしたら神童センパイは笑って霧野センパイのところに戻って行った。
今のはもしかして頭をなでられた…のか?
何で急に…。
よくわからないがそろそろ休憩時間が終わる。
…取り敢えず自分の教室に戻るか。


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