1号
□炎の災難
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「ああ、バー…グッ…ゲホッ!」
「うぉ!?だ、大丈夫かよ?」
背を向けた瞬間ガゼルが咳込み苦しそうに身を縮ませた。
バーンは跳ねるようにベッドに近寄り、まだ咳がおさまらないガゼルの横をわたわたと動き動向を見ていたが、意を決して背中をさする。
「す、すまない…」
「驚かせんなよ!マジで死ぬかと思ったじゃねえか!」
「…わたしも少し…そう思ったよ…」
しばらくしてようやく落ち着いたガゼルに声を荒げるバーン。
しかし内心は何もなかった事にほっとしていた。
「もう平気だな?」
「ああ、大丈夫だ」
「よし」
言葉と見た目で確認すると、ガゼルから目を離さずに少しずつ扉ににじり寄る。
その瞬間またガゼルが咳込みバーンがベッドにとんぼ返りした。
「ったく全然ダメじゃねえか!そんなんでよく大丈夫だなんて言えたな!」
−−−−−
「…グラン、人の部屋の前で何をしてるんだ?」
同じ頃扉の向こうで静かな声が響いた。
声の主はウルビダで、壁に耳を付けかなり怪しい恰好のグランを冷ややかな目で見詰めている。
「経過観察ってとこかな。けしかけた人間としては二人がどうなってるか見届けなきゃいけないと思わないか?」
「…何だか知らないがおまえも暇だな」
「だってあの二人いつまでも煮え切らないだろう?こうでもしないと距離が縮まらないよ」
「煮え切らないって…一体おまえはバーンとガゼルをどう言う目で見てるんだ…?」
目も合わさずに楽しそうに聞き耳を続けるグランを見て、ウルビダは呆れた様子で長いため息をついた。
「あれ、もう行くのかい?」
「飲み物を取ってくる。あれだけ咳込んでいたら相当苦しいし辛いだろうからな」
そう言ってウルビダは長い髪を払うとその場を離れていった。
「いいか?何か水とか飴とか取ってくるからここにいろよ?死にかけたら誰か呼べよ?分かったな?」
その時、言いたい事を一方的に叫びながらバーンが外に出てきた。
当然グランと鉢合わせになる。
「や、やあ…」
「…おめー何やってんだよ?」
そそくさと立ち上がるとあははっ…と気まずそうに笑った。
バーンは先程のウルビダのものより数段冷たい目でグランを睨む。
「ついに見つかったか」
「ウルビダ、これどう言う事だよ?」
するとお盆に水とコップを乗せたウルビダが帰ってきた。
バーンがグランを指差して問い掛ける。
「ああ、それはな…」
この後ウルビダから説明を受け、しばらくバーンとガゼルがグランから距離を置いたのは言うまでもない。
→あとがき