1号
□炎の災難
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研究所の共用グラウンドに朱色の髪の少年が一人立っていた。
すぐに出入り口からもう一人別の少年が姿を現し、こちらに向かってくる。
「やあ、南雲くん」
朱髪の少年が入ってきた少年の名前を呼んだ。
南雲と呼ばれた少年は朱髪の少年を睨みつける。
「…グラン、本名で呼ぶんじゃねえよ。ここじゃ宇宙人ネームで呼び合う決まりだろ?」
「そうだった。悪かったね、バーン」
グランと呼ばれた朱髪の少年は南雲晴矢、もといバーンに笑いかける。
バーンは大きな音で舌打ちをするとグランの元へ歩いてきた。
「ねえ、雷門イレブンが愛媛で真・帝国学園と試合した話は聞いているかい?」
開口一番グランがそう切り出した。
バーンはああ、と短く答えて腕を組む。
「父さんに取り入ってた影山って監督が率いてたチームが負けた話だろ?せっかく造ってやったスタジアムが崩壊して海に沈んだらしいじゃねえか」
「その通り。まあ負けたと言ってもフォワードの子がプレイ続行不可能になって、試合自体は引き分けになったみたいだけどね」
「ハッ!所詮エイリア石の力に頼り切ってた付け焼き刃のチームだったからな。オレは雷門のヤツらが勝って当たり前だったと思うぜ?」
口の端を吊り上げ手をヒラヒラと動かす。
「それに今大阪でイプシロンのメンバーが特訓してんだろ?そこで叩きのめされるに決まってる」
「…そう、かな」
「何だよ、その含みのある言い方はよ。言いたい事があるならはっきり言いやがれ!」
グランの態度がカンに障ったらしく眉を吊り上げて詰め寄った。
しかしまったく動じずグランはバーンを真っすぐ見る。
「…彼らは着実に、いやかなりのスピードで成長している。いつかイプシロンも倒してオレたちマスターランクの所まで上がって来るんじゃないかと思うんだ」
「イプシロンのヤツらが負ける訳ねえだろ。それにもしヤツらがここまで来たってジェネシスの称号を授かったオレたち三人のうち誰かがブッ潰す。…それで終わりだ」
自分に言い聞かせるように呟くとグランと距離を取った。
「…そういえばガゼルのヤローはどうした?いつもなら集会に遅刻するなんて考えられない、とかうっとうしいくらい突っ掛かってくるのに張本人が遅刻か?」
「ああ、さっきベルガくんに聞いたんだけど、体調崩して寝込んでるんだって」
「はぁ?寝込んでるだと?」
まさかの事に思わず声が大きくなった。
グランは無言で頷く。