1号
□炎の災難
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「どうやら風邪をこじらせたみたいだよ。ここのところ随分と夜遅くまで練習してたらしくて、昨日雨の中でやっていたのが決定打だって言ってた」
「…ダッセーな。あいつろくに自己管理も出来ねえのかよ」
心配そうに考え込むグランをよそにバーンは腕をくんで意地の悪い笑みを浮かべる。
しかし表向きにはエイリアから来た宇宙人、星の使徒となっている彼らだが本当は児童養護施設お日さま園に通っていた普通の中学生。
当然万能の生命体などではなく、無理をすれば体調も悪くなるし、風邪をこじらせれば寝込みもする。
それはバーンも十分承知の事だったがどうも素直に心配する事が出来ない。
「と、言う事でバーン。お見舞いに行ってきてくれないか?」
「はぁああ!?何でだよ!何でオレがあいつの見舞いなんか行かなきゃならねえんだ!」
予想外の切り返しにバーンはもう一度グランに詰め寄った。
グランは不思議そうな顔でバーンを見る。
「だってドシャ降りの雨なのにも関わらず練習しようってガゼルを誘ったのバーンだろう?」
「なっ…!」
「そのせいでガゼルが風邪を引いた。と、なるとその責任はキミにあるんじゃないのかな?」
グランの目がスウッと細められた。
バーンはまるで蛇に睨まれた蛙のようにビクッと体を震わせる。
「ガゼルはキミと違って繊細だから、風邪が長引いてダイヤモンドダストの練習が滞ったら当然ジェネシスの選考にも影響する。キミもそんな事で彼と決着を付けるのは不本意だと思わないかい?」
「そ、それはそうだけどよ…」
悪口を言われたのにも気付かないほどバーンは真剣に考え込んでしまった。
グランはバーンの隣に並ぶと優しく肩を叩く。
「だけどお見舞いに行って素直に謝っておけば貸し借り無しになるだろう?だからオレは行ってあげた方がいいと思うな。それにホラ、病気の時って…」
「あー!分かったよ!」
それ以上耐え切れ無くなったバーンの大きな声が話を遮る。
ひとしきり頭を掻きむしるとダンッと足を鳴らした。
「行ってこればいいんだろ!?」
「そうこなくちゃ」
グランは爽やかな笑顔で微笑みをバーンに向ける。
「じゃあ頼んだよ。オレは父さんの所に用があるから」
「そうかよ!どこでも勝手に行け!」
バーンはグランを押しのけるように出入り口に向かった。
肩がぶつかりグランは2、3歩よろける。
それにも気にせずつかつかと歩きバーンは出入り口から消えていった。
「これでよし、と。どうなるか見物だね」
そう言って微笑むとグランは父さん−吉良星次郎−の元へ向かった。
悪魔の笑みと呼ばれる顔で。
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