1号
□イライラの原因
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「ほらよ!」
何とかあいつの部屋に着いたからすぐにベッドに投げ捨てる。
「…すまない」
「ハッ…いつぞやの借りを返しただけだ」
あいつから顔を反らして部屋を見回す。
オレも部屋に物が少ないと思ってたがこいつの部屋はホント必要最低限って感じだ。
しかも全てきちんと整理整頓されている。
机にはノートパソコンとオレたちのデータ、それに書きかけの紙が置いてあった。
あいつに朝もらったやつの書き損じだ。
寝不足の原因はこれか。
思えば今まで監督が練習メニューを個別に紙に書いて渡すなんて事は無かった。
大方監督にやれって言われて律儀に一人でちまちま作ったんだろうな。
それでせっかくやったのに“監督にプログラム組んでもらった”なんて自分の手柄他人に渡しちまうなんて、お人よしにもほどがある。
同じような事帝国でも雷門でもやってたって言うんだから、完璧主義なのも度を越えるとただの馬鹿だ。
それで歩きながら寝るぐらい追い詰められてりゃ世話ねえぜ。
「おい、オレ行くからな?監督には…」
振り向くとあいつはもう眠っていた。
オレが30秒ぐらい部屋見回してる間に寝ちまうなんて漫画かよ。
「ったく…」
ため息をついてベッドに近付く。
気が付けばこいつに対してあんなにつのってたイライラは消えていた。
機械みたいだと思っていたこいつの人間らしい所が垣間見れたからかもしれない。
「うわ…」
その不思議な光景に思わず声が出た。
ベッドの横の小さなテーブルには赤いマントが置いてあった。
寝るのに邪魔だから外したんだろうがゴーグルはつけたまま。
「普通逆じゃねえか?」
いや、どっちにしろ寝にくいか。
オレだったら両方外す…っつーかそもそも両方ともつけねえし。
相変わらず変な趣味してるよな。
見てるこっちが苦しくなってきたから外してやろうとゴーグルに手を伸ばす。
オレ自身何でそんな気持ちになったのかは分からない。
「不動」
「!!」
ゴーグルに手を掛けた瞬間名前を呼ばれた。
当然心臓が跳ね上がる。