1号

□無人島に一つだけ持って行くものとその理由を書け
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「…何だ皆して。着替えもせずに何をしているんだ」

「鬼道!それに豪炎寺!」

円堂が今入って来た人間の名前を呼ぶ。
メンバーの現状に鬼道は眉をしかめ、豪炎寺は無言で鞄を下ろした。

「実は今さ…」

今までのいきさつを二人に話す。
終始二人の冷めた目つきは変わらなかったが、最後まで話は聞いてくれた。

「なるほどな。話は分かった」

「それでさ豪炎寺、おまえなら何持ってく?」

話を振られた豪炎寺はしばらく考え込んだ後ゆっくりと皆の方を見た。

「夕香の写真…だな」

「ゆ、夕香ちゃんの写真?」

思わず円堂はおうむ返しした。
豪炎寺は胸元を握りしめ切ない表情を浮かべる。

「夕香にはオレがついていてやらなきゃいけないし、同時にオレには夕香が心の支えなんだ。なのに会えなくなるのならせめて写真だけでも側に置いておきたい」

「…あのさ、豪炎寺。それはおまえがシスk」
「うぉいッ!!そこまでだ半田!!」

半田が最後まで言葉を言わないうちに染岡が口を塞ぎ、首に腕をかけたまま強引に輪の外に連れ出す。

「何すんだよ!」

「ここでそれを最後まで言ったら…怒るの豪炎寺だけじゃねえ事分かるだろ?」

「……悪い」

半田は噂の当人たちを見て大人しくなる。
確かに今の台詞を全て吐いたら討論のテーマが変わってしまう、と言うより追求される対象が変わってしまう。

「んじゃあ鬼道は?」

染岡の苦労を知ってか知らずか、円堂は軽いトーンで鬼道に答えを求める。
先程からずっと腕組みをしたまま話を聞いていた鬼道は、眉をしかめたままメンバーの方を見た。

「帰りの船に決まっているだろう。おまえらそこで何泊する気だ?」

「……え?」

一同は固まった。
その空気を少しも気にしないでまったく…などと独り言を呟きながら荷物をしまい、鬼道は着替えを始めた。

「鬼道さんの言う事はもっともッスけど…一応一人でサバイバルするって前提の話ッスよね?」

「…そうだね…それにその回答はタブーってやつだと思うな……」

壁山が影野に耳打ちし、影野は静かに頷く。
他のメンバーからも愛想笑いや何とも言えない表情しか出てこない。

「さあ、おしゃべりはここまでだ。練習を始めるぞ」

鬼道のゴーグルが鋭く光る。
そして颯爽とマントを翻すとグラウンドに行ってしまった。

「鬼道って…」

「ギャグを説明させるタイプだよな…。冗談が通じないっていうか」

風丸が重たそうに扉を閉める。

テンションが一気に下がったメンバーは沈んだ気持ちで今日の練習に臨むはめになった。


→あとがき
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