1号
□無人島に一つだけ持って行くものとその理由を書け
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「やっぱり水じゃない?水分だけで何十日も生き延びた人の話もあるし」
「ええ?ここは食べ物だろ?水は海水をどうにかすれば蒸留水ってのになるらしいから、困らないって」
「いや、火だろ。何をするにも火がなきゃ始まらねえよ」
いつもならとっくに練習が始まっているはずのこの時間、雷門中サッカー部部室でメンバーの唸る声が聞こえる。
そこには少林、栗松など一年生部員を囲むように風丸、半田などの二年生が立っていた。
「よう、皆!」
その時、明るい声と同時にガラッと勢いよく扉が開いた。
声の主は我らが雷門中サッカー部キャプテンの円堂守。
後ろからの光りを浴びてトレードマークのオレンジのヘアバンドがキラリと光る。
「…?どうしたんだ?皆で固まってさ」
返事を返してくれないメンバーを不思議に思いながら輪に近寄る。
すると今気付いたと言う表情で風丸が円堂を見た。
「ああ、一年生の社会の宿題で“無人島に一つだけ持っていく物とその理由を書け”って言うのが出たらしいんだ。それを皆で考えてたんだよ」
「へえー…そんなのオレたちの時には無かったよな」
円堂は無理矢理風丸の横に入り、机に広げてあるプリントを覗く。
「痛っ!い、一年生の社会の先生って確か新任の先生だったもんな。無くて当たり前だよ…痛いって!」
円堂に押し退けられた半田が頑張って元の位置に戻ろうとする。
それを見兼ねた染岡とマックスが円堂のスペースを空けるため輪を広げた。
「でもすっげー面白そうだな!今までどんな意見が出てるんだ?」
「水と食べ物、あとは火に調理道具ってとこかな。まあありきたりだよね」
マックスがプリントを指差しながら説明する。
それに円堂はふんふんと頷いた後、ビシッと人差し指を突き出した。
「そういうのも大事だけどさ、やっぱサッカーボールだろ!」
「…言うと思った」
「ホントおまえは期待裏切らねえな」
風丸が呆れた顔で呟く。
染岡もフウッと長いため息をついた。
「待てよ!ちゃんと理由があるんだよ」
「どんな理由だ?」
皆を見回す円堂を風丸は横目でチラッと見た。
円堂はマックスからプリントを取ると指で項目をなぞる。
「確かに食べ物とか水とか生きていくのに必要だけどさ、無人島って事はやる事何も無いんだぜ?だけどサッカーやってたら時間が潰せるじゃないか」
「ま、確かにそうでやんすが…」
イマイチ納得がいかない様子で栗松が頭を掻いた。
「でもサッカー以外じゃ一人で出来る物ってあんまりないですもんね。だからキャプテンのが正解かもなぁ」
「そうだね。食べ物とかは何とかなりそうだし以外といい線突いてるかも」
宍戸と少林は円堂の意見に賛成の言葉を述べる。
他のメンバーも顔になるほど、と書かれている。
するとまたもや扉が開いた。