1号
□大勢で食べるのも悪くない
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『…給食当番の人は配膳室に集まって下さい…』
4時限目終了後、いつもと変わらないアナウンスが流れる。
その放送を背に鬼道は席を立った。
手には巾着袋を持っている。
そして他のクラスメイトがガヤガヤと机を移動する中、一人静かに教室を後にした。
「きーどうっ!」
扉を閉めた瞬間、かなりの強さで背中を叩かれた。
反動で2、3歩よろける。
「か、加減と言うものを知って欲しいんだが…」
背中をさすりながら振り向く。
そこには楽しそうな顔の円堂と、同情の目を向けている豪炎寺が居た。
「その様子だとちゃんと来てくれるみたいだな!」
「一応約束したからな」
白い歯を見せ眩しく笑う円堂に、鬼道はどこか寂しげに笑い返す。
「さ、早く行こうぜ?オレすっげー腹減ってるんだよ」
そう言ったそばからぐぅ〜と間の抜けた音が鳴る。
「…みたいだな。まあ正直でいいんじゃないか?」
「あはっ…あははっ…」
笑いをこらえながら言う鬼道に、円堂は赤面して笑うしかなかった。
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「やっとお出ましかよ。ったく言い出しっぺが遅れてりゃ世話ねえぜ」
部室に入った瞬間、染岡の低い声が響いた。
中には既にメンバー全員が集まっている。
「悪い、悪い。でも皆集まってくれたんだな。オレ嬉しいよ!」
円堂は足早に駆け寄り、目を輝かせて皆を見渡す。
「考えてみれば、部員全員で昼食べるなんて今までした事無かったもんな」
「何か合宿みたいでワクワクしますよね!」
円堂だけでなく、メンバーからもそわそわした空気が伝わってくる。
「よし!じゃあ早速いただきますだな!」
円堂が空いている隙間に座り込んだ。
豪炎寺と鬼道は荷物が置かれている段差に寄り掛かる。
「おまえらそんな所にいないでこっち来いよ!特に鬼道は今日の主役なんだからさ!」
「あ、いやオレは…」
「遠慮すんなって!ほら、豪炎寺も!」
円堂は二人の腕を掴み、強引に座らせた。
決して広くない部室で皆が座り込み、更に弁当を広げるので部室内はすし詰め状態になる。
「それじゃ、いっただきまーす!」
パシンッと両手を合わせ円堂の明るい声が響いた。
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