1号

□かならずまもるから
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「かえして!はるなのおにんぎょうかえしてよ!」

施設の裏庭に春奈が大きな声が響いた。
春奈の周りには2、3人の年上の少年がいる。

「何だおまえ。こんな汚い人形大事なのかよ!」

「やめて!お母さんに買ってもらったおにんぎょうなの!」

必死に手を伸ばすが相手は年上の上に男子、春奈が勝てる相手ではない。

その時、

「春奈!」

鋭い声と共に春奈とそう歳の変わらない少年が走って来て、年上の少年たちに後ろからタックルをかました。
反動でその少年は地面に崩れる。

「お兄ちゃん!」

春奈が口を押さえて叫んだ。
春奈の兄、有人はぐっと拳を握りしめて息を整える。

「何するんだよおまえ!」

「こっちのセリフだ!春奈の人形かえせよ!」

有人は紅い瞳で背も横幅も自分の倍以上ある少年たちを睨みつける。

「…ケッ!正義のヒーロー気取りかよ!何かシラけちまったな。行こうぜ!」

有人の瞳に怯んだ少年たちは、ポイッと人形を投げると捨て台詞を吐いてぞろぞろと去っていった。

「春奈、大丈夫か?」

「…うわあああん!お兄ちゃーん!」

緊張の糸が切れたのか、春奈は有人に抱き着き一気に泣き出した。
そんな春奈を有人は優しく抱きしめ背中をさする。

「春奈、またあいつらになにかされたらすぐにお兄ちゃんを呼ぶんだぞ?どんな時でも、かならず春奈をまもるから!」

「ほんと?」

「ほんとだ!」

不安そうに見上げる春奈に、有人は白い歯を見せて笑いかけた。
それに安心した春奈も笑顔になり、もう一度ぎゅっと有人に抱き着く。

「有人!いっしょにサッカーやろうぜ!」

その時、後ろから有人を呼ぶ声がした。

「ああ!すぐいく!」

顔だけ声の方に向け、返事をする。
それに気付いた春奈も有人から離れ、涙を拭う。

「お兄ちゃん、春奈もいっておうえんするね!」

「ありがとう春奈。さ、いっしょにいくぞ!」

有人は春奈の手を繋ぎ、運動場に向かった。


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