1号
□同じ色、同じ瞳
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「どうしたんだ?木野たちと一緒に行ったんじゃなかったのか?」
春奈のいたずらは流して辺りを見回す。
『よっしゃあ!滅多に無い休み、女子だけ水入らずで茶ァシバきにでも行こか!』とリカが発起人になり、マネージャー三人と塔子を加えた五人でワイワイと楽しそうに出て行ったのだが今は春奈一人だ。
「あ、うん。最初はちゃんと皆で喫茶店に行く予定だったんだけどね、途中で恋占いがよく当たるって噂の占い師さんがいてリカさんが一目散に並んじゃったの。皆で離そうと頑張ったんだけどてこでも動かなくて」
「リカらしいが、それなら余計おまえが一人でいる理由が分からないんだが…」
「お兄ちゃんが見えたから」
…。
ますます意味が分からないな…。
「占い師さんがいた道からお兄ちゃんが歩いてるのが見えたの。それに気付いて何となく目で追ってたら木野先輩も気付いて、気になるなら行ったらって言われたんだ。わたしは断ったんだけど、何人いても変わらないからって」
「なるほどな。しかしせっかく来てもらって悪いんだがもう一度戻った方がいいぞ?オレは今から陽花戸中に帰るつもりだったから」
「え?帰っちゃうの?」
春奈の目が丸くなる。
大方夕方までサッカー禁止なのに今戻って何をする気だ、と考えているのだろう。
「ここのところ皆の実力が確実に上がっている。そろそろデータを書き換えようと思ってな」
「ふーん…」
腕を組んで考え込んでしまった。
何を考える事があるのだろうか。
「じゃあわたしに付き合ってよ!」
「…何?」
「だって帰るつもりだったんでしょ?だったらわたしに付き合ってくれたって何にも問題無いはずじゃない?」
確かにそうだな。
「もしかしてわたしと行くの嫌なの?」
深緑の瞳がオレを見上げている。
「…分かった。何にかは知らないが付き合おう」
「ホント?やったあ!」
春奈は文字通り跳んで喜ぶ。
オレが春奈からの頼みを断るとでも思っていたのだろうか。
「そうと決まったら早く行こ、お兄ちゃん!」
「お、おい!マント!マントを引っ張るのはやめてくれ!ころ…」
その瞬間オレの視界は一面地面になった。
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