1号

□帝国学園休憩室にて
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「そうなんですか…。でも、何で響木監督はあいつなんかを日本代表に選んだんでしょうか。影山と手を組んでいたあいつを…」

ギリッと歯を食いしばり拳を握りしめる。
鬼道は静かに腕を組み、ゆっくりと天井をあおいだ。

「響木監督の胸中はオレにも分からない。だがオレは…とりあえずあいつを信じてみようと思っている」

「鬼道さん?!」

佐久間から飛び出す当然の反応。
鬼道は天井をあおいだまま言葉を続ける。

「もちろん不動への不信感が消えた訳じゃない。しかしあいつは不動の事を仲間だと信じて疑っていない」

「あいつって…円堂守、ですか…?」

円堂の名前が出た瞬間、佐久間が寂しそうに顔を伏せる。
鬼道はそれに無言で頷き二の句を継ぐ。

「円堂はいつもそうなんだ。まだ帝国に居たオレを練習に誘ったり、たとえ宇宙人でも試合が終われば手を取り合おうとする。良い意味でも悪い意味でも真っすぐ過ぎるやつなんだよ」

「……」

「だが、何故かあいつの言葉には心惹かれるものがある。根拠は何も無いのに、あいつが一言言えば本当に出来てしまう気になる。そんなあいつが不動を信じると言った。だからオレもそれに倣ってみようと思う」

静寂が訪れた。
佐久間は顔を上げようとはせず、鬼道も佐久間の反応を待っている。

「…分かりました。鬼道さんがそう決めたならオレは何も文句は言いません」

しばらくした後小さく呟いた。
鬼道は身構えて佐久間を見つめる。

「でも!」

そこで佐久間は顔を上げる。
少しためらうそぶりを見せたがすぐに口を開いた。

「でも、この先不動がずっと大人しくしているとは思えません。他のメンバーが全員あいつに気を許しても鬼道さんは…」

「心配するな。オレは円堂に倣うとは言ったが、一から十まで不動に心の内をさらすつもりはない。それにあいつだって代表から外されたくは無いだろうからな。監督の反感を買うような事はそうそうしないはずだ」

すがるように見る佐久間に鬼道は笑いかけた。
佐久間は完全に納得した訳ではないが渋々引き下がる。

「そう…ですね。そう思う事にしま…」

もう一度鬼道の方を向いた時、急に佐久間は目を見開いた。

「大変だ…そろそろ帰らないとまずいですよね?」

「…本当だな。もうそんなに時間が経っていたのか」

鬼道は振り返り壁に掛かった時計を見る。
気付けばここに来た時から30分はゆうに過ぎていた。

「久々にゆっくり話が出来たと言うのに、こう言う時ほど時間が過ぎるのが速いものだな」

ひざに手をついて立ち上がる。
佐久間もすぐに立ち上がって鬼道のに駆け寄る。

「出口まで付いて行っていいですか?」

「ああ、もちろんだ」

二人は並んで休憩室を後にした。


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