1号
□帝国学園休憩室にて
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「そういえばおまえ一人か?源田たちは一緒じゃないのか?」
鬼道は何気なく辺りを見回した。
それに対し佐久間が明らかに顔を強張らせる。
「…そ、そうだ鬼道さん。少し話でもしていきませんか?代表合宿の話とか聞かせてくださいよ!」
誰にでも分かるような愛想笑いをして部室を指差す。
「佐久間」
「はいっ!」
鬼道のゴーグルが光った。
帝国にいた時のような冷静な声に思わず気をつけをしてしまう。
「オレの質問に答えていないぞ?」
「す、すみません…」
鬼道の外からは見えないはずの紅い瞳にいすくまされ、たじろいだ佐久間は目を泳がす。
「…その、今日はサッカーグラウンドが全面整備される日で、練習が無かったんです。ですがオレはそれを忘れてて…」
「グラウンドに行ったはいいものの、その時その事を思い出して帰ってきた、と言う訳か」
「はい…」
小さく返事をして恥ずかしそうにうつむいた。
それを見た鬼道はフッと笑みをこぼす。
「らしくないミスだが、人間たまにはそういう事もあるだろう」
励ますように佐久間の肩をぽんと叩いた。
肩を叩かれた佐久間はおずおずと顔を上げる。
「部室は空いているんだろう?そこでなら話もゆっくり出来るな」
「…え?」
「何だ、話が聞きたいと言ったのはおまえじゃないか」
そう言うと鬼道は通い慣れた部室に向かって歩きだす。
佐久間も慌てて後を追った。
*****
「が、外出禁止ですか?!」
「ああ。オーストラリア戦が目の前に迫ってきていると言うのにだ」
思いがけない鬼道の話に佐久間は思わず身を乗り出す。
二人は部室内に設けられた休憩スペースで話をしていた。
もちろん休憩スペースと言っても他の学校とはケタが違う。
広さはここだけで雷門サッカー部部室の倍以上、空調設備も完璧で自販機や洗濯機も設置されている。
これがほとんど使用されることは無く、使われたとしても着替えや荷物整理などのわずかな時間だけの利用だと言うのだから驚きである。