1号

□夜の疾走ネオンランプ
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「へえ…こっちの辺りってこうなってるのか。この辺はあんまり来た事無いからな」

などと独り言を呟きながら円堂は辺りを見回す。

結局鬼道の提案できちんと久遠監督に事情を説明し、捜索の許可を貰いに行った方が良いという事になった。

また何を言われるかと緊張しながら行ったのだが、監督は目を閉じたまま話を聞くと、一言「明日の練習に響かない程度に戻って来い」と言っただけでそれ以上言葉を発することは無かった。

「それにしても結構道がごちゃごちゃしてるな。…やっぱり誰かと一緒に捜した方が良かったかも」

冷や汗を垂らしながら頬を掻いた。

一言に稲妻町と言ってもかなり広く、当然手分けして探す事になったのだが、全国から集まってきた人間が多いため、そのメンバーは地元の人間と組んで探す事にした。
円堂は稲妻町は自分の庭だ、というような事を言い出したので一人で行動する事になったのだが、いきなり行き先不安になっている。

「綱海の事だから海が見える場所にいると思ったんだけどな…」

2、3歩歩くたびにキョロキョロと辺りを見回し、綱海がいないか確認する。
しかし時間も時間なためか綱海どころか人の気配もしない。

「うっ…」

その時急に眩しい光に襲われ、とっさに手でかばう。
腕の隙間から覗くと、光の正体は湾に沿って建てられたビルを照らしている照明だった。
さっきまで街灯がポツポツとしか無く何となく薄暗かった道も、今は赤や緑にきらめいている。

「うわぁ…すっげー綺麗だな。でも何のためにビルをライトアップなんてしてるんだろうな」

手でひさしを作ってビルを眺める。
ビルの照明は色々なパターンで動き、チカチカと目まぐるしく変わっていく。

「ん?」

光に照らされた船着き場の辺りで一瞬何かが動いた気がした。
近寄って目を凝らしてみると、どうやら人のようである。

「もしかして…!」

侵入禁止の鎖を強引に乗り越え、急いで船着き場へと走った。
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