1号
□心の迷路で迷ったら
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「鬼道、おまえちょっと休んだ方がよくないか?」
「何故だ?目立ったミスはしていないと思うが」
円堂は水を飲みながら鬼道を見た。
鬼道は秋からタオルを受け取り肩に掛ける。
「いや、皆がおまえがいつもと違うって言うからさ」
「確かに今日は少し寝不足で体が動かしにくいのは事実だ」
鬼道は目線を外し、隠すように顔を拭く。
「…今無理するのは得策ではないな。忠告通り休ませてもらうとしよう」
「ああ、それがいいよ!」
円堂は白い歯を見せて笑い、フィールドに駆けて行った。
鬼道はそんな円堂を目で追う。
「隣、座ってもいい?」
肩を叩かれ振り向くと吹雪が立っていた。
鬼道は無言で頷き、少し横にズレてスペースを空ける。
「練習はいいのか?」
「フフッ、まだ休憩時間だよ。キャプテンはいてもたってもいられないみたいだけど」
吹雪は手でひさしを作り、楽しそうに円堂を見た。
「まったくだな…」
鬼道もつられて笑みをこぼす。
「…最近よく夜中に外へ出て行ってるよね?」
しばらくその状態が続いたあと、唐突に吹雪は話を切り出した。
その言葉に鬼道は明らかに動揺している。
「そんなに眠れない?まあ明後日はエイリアの研究所に乗り込むんだから、緊張する気持ちは分かるけど」
「…そんなところだ」
鬼道は吹雪から目線を外して呟く。
吹雪は一瞬驚いた表情になりくすっと笑った。
「鬼道くんは嘘が下手だね」
「嘘が…下手?」
鬼道は不思議そうに吹雪を見た。
吹雪はゆっくりと空を仰ぐ。
「本当は何か心に引っ掛かってるから、眠れないんでしょ?」
「なっ…」
「分かるよ。ボクだって少し前までそうだったから」
空を仰いだまま吹雪は静かに微笑む。
鬼道は核心を突かれ目を見張った。
「目が覚めたらアツヤに取って代わられてるんじゃないかって思うと、怖くて目が閉じられなかった。だからよく一晩中空を眺めてたんだ」
「…すまない。オレたちがおまえに期待を掛けすぎてしまったばかりに…」
「ううん、気にしないで」
思わず詰め寄った鬼道に、吹雪は制止させるように笑顔を作る。