5号
□あの店の中に集まろう!
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雷雷軒は一気に騒がしくなった。
10年来の仲間が久しぶりにほぼ全員一同に会したのだから当然と言えば当然なのだが。
「円堂くん、みんな」
そう言って近づいてきたのは秋。
いつものワンピースより少しだけよそ行きの格好だ。
そんな秋の顔を見た佐久間が思い出した、というような表情で口を開いた。
「ありがとう。キミがこの集まりの発起人になってくれたんだってね」
「発起人だなんて。実際動いてくれたのは円堂くんだよ。私はみんなでまた集まりたいね、って言っただけ」
秋は少しほおを赤らめ「ね?」と円堂に同意を求めた。
ことの発端は1ヶ月ほど前のこと。
本日のサッカー部での監督業務を終え、家路につこうとしていた円堂が、秋と偶然出会ったところからから話は始まる。
「アキ!久しぶりだな!」
「久しぶり、円堂くん。今帰り?」
「ああ、鬼道に練習メニューを相談してたんだ。そういうアキは?」
「晩ごはんの買い出し。材料1つ買い忘れちゃって」
“晩ごはん”の単語に円堂の顔が引きつった。
円堂がそんな顔をする理由がわかっている秋は、申し訳なさそうな顔をしている。
「…うちで食べてく?天馬も喜ぶと思うけど」
「………いや、また今度にするよ。夏未が晩飯の用意してくれてるだろうし」
考え込んだ時間が本心だろうな、と思いつつ秋は次の話題を探す。
するとそれより早く円堂が話出した。
「そういえば2、3日前商店街で風丸とばったり会ってさ。ホーリーロードスタジアムで試合があるらしくて、オフの時間使ってラーメン食いに来たらしい」
「風丸くんと?…あ、もしかして月曜じゃない?その日天馬がホーリーロードスタジアムにサッカー観戦に行くって言ってたし」
「そうなのか?よくチケット取れたな。風丸のチームのチケットってすっげえ倍率高いのに」
「ふふっ。それは円堂くんのチームも同じでしょう?」
秋が笑い混じりにそういうと、なぜ笑われているかわからない円堂はキョトンとした顔をしている。
すると秋はふと空を見上げた。
つられて円堂も顔を上げると、空は大分紫を帯びてきている。
「…そうだよね、もう『久しぶり』になっちゃうんだよね。少し前まで毎日会ってたのに」
「そうだな。そりゃ電話やメールはたまにするけど、実際会うってなるとなぁ…」
「またみんなと会って色々話したいね。昔みたいに雷雷軒で」
「じゃあ会うか!」
「…えぇっ?」
思わず大きな声を出してしまい、その大きさに自分が驚いた秋は慌てて手で口をふさぐ。
2、3回瞬きをしたあと円堂を見れば、いつもと変わらない眩しい笑顔を浮かべている。
一呼吸置いて息を整えたあと、秋は口を開いた。
「えっと、どういうこと?」
「だからさ、同窓会だよ。イナズマジャパン結成10周年ってことでみんなで集まろうぜ!」
“同窓会”その響きに秋の心は踊った。
またあの最高のメンバーで集まれる。
そう思うだけで気持ちはもう10年前だ。
「…でも、実際難しいんじゃない?染岡くんや不動くんは海外だし」
「声掛けるだけ掛けてみようぜ。イナラインで連絡飛ばせば早いしさ」
「…うん!そうだね!」
悩んでいても結果は出ない。
迷ったら行動あるのみ。
それがキャプテン円堂守だ
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