5号

□疑心と自信
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適当に時間を見計らってから俺は通信室までやってきた。
あの地球人のいう通り通信室からも気配を感じないし周りにも誰もいない。
まあデータによればコイツは兄貴に相当肩入れしてるみたいだからな、その辺は他のヤツらもわかってるんだろう。
中に入るとすでに通信可能な状態になっていた。
画面にはコイツによく似た地球人が映っている。

『京介!久しぶりだな!』

俺の顔を見るなりうれしそうな声を出す。
データとも一致した。
間違いなく剣城京介の兄貴、剣城優一だ。

「うん。久しぶりだね、兄さん」

『驚いたよ。おまえから通信してくれるなんて初めてだったから』

「ゴメン。兄さんの顔見たら地球に帰りたくなっちまうんじゃないかって思ったんだ」

『…そうか。でもなんにせよ話せてうれしいよ』

ハッ。剣城京介が肩入れしてるって言ってもこの程度か。
コイツちっとも疑ってねえぜ。
どうやらオズロックの取り越し苦労だったみたいだな。

『それより宇宙での生活はどうだ?やっぱり色々と不便なのか?』

「いや、船内は重力場が安定してるし地球とのほとんど変わらないよ。メシも今まで食べてたのと大差ないし」

『へえ、それは蒲田さんの料理の腕に感謝だな』

フッと目を細める剣城優一。
この裏表のない感じ何か腹立つぜ…。
コイツのこと信頼してんだろうな。

『みんなとは上手くやってるのか?おまえはあまり自分から話さないから心配でさ』

「当たり前だろ?みんなと仲良くやってる。少しでも上手くなろうって遅くまでぶっ通しで練習してるんだぜ?」

俺がそう答えると剣城優一は複雑な表情を浮かべた。
そして覗き込むように俺を見つめる。

『無茶はするなよ?それでコンディション崩したら元も子もないんだから』

「わかってるよ。瞬木や市川には同じフォワードとして負けられねえし。まぁ、実力はまだまだ俺が一番だけどな」

そんなことは実際どうかよくわからねえけどな。
他のヤツらの練習なんかまともに見てねえし。
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