3号
□本物の証
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「どうしてキミが…?だってキミはもう何年も前に…」
「分かってるよ。でも、みんなにとって本当に必要なのはどっちだろうね」
気が付いたら、吉良ヒロトは彼の瞳にヒロト自身の姿が映り込むほどまで近寄ってきていた。
ヒロトの頬に冷たい汗が流れる。
「結果は…考えるまでも無いよね?」
そう言ってヒロトと距離を取ると、吉良ヒロトは辺りを見回す。
すると両隣に2つの人影が滲み出てきた。
「ッ…!」
人影の正体は最愛の義父、吉良星二郎と義姉瞳子だった。
2人は優しい表情でスッと吉良ヒロトに寄り添う。
それは、最も見たくない光景だった。
「今までありがとう。おまえはわたしの期待以上だったよ」
「父、さん…?」
「まるでヒロトが戻って来たような日々だった。おまえは、わたしの心の隙間を十分過ぎるほど埋めてくれたな」
「でももう大丈夫よ。こうして本物の兄さんが戻って来たんだから」
そう言ってが優しく微笑むと、行きましょう、と瞳子は吉良ヒロトに手を差し出した。
吉良ヒロトは嬉しそうに差し伸べられた手を握り返す。
それを見ていた吉良星二郎は、後ろから2人の肩を包むと歩くように促した。
「まっ…てくれ…」
ヒロトは震える指先を必死に伸ばした。
心臓は早鐘の様に激しく動き、呼吸を乱していく。
「父さんを…姉さんを…オレから奪わないでくれ…」
なんとか追い掛けようと無理矢理身体を動かそうとするも、足は地面に縫い付けられたように1歩も動かすことが出来ない。
その間にも、3人はどんどん遠ざかって行く。
そればかりか、イナズマジャパンのメンバーも、お日さま園のみんなも、吉良ヒロトと一緒に歩いて行ってしまう。
「父、さん…姉…さ…」
ヒロトはその場に崩れ落ちた。
しかし、認めたくないが瞳子の言う通りだ。
彼が戻ってきた以上、自分に居場所は無い。
元々、自分は彼の代わりとして育てられてきたのだから。
「あ…ああ…」
頭が恐怖で支配されていく。
意識しなければ呼吸さえまともに出来ない。
「あ…あ…うわあぁあああああッ!!」
「…ロト!ヒロト!!」
「ッ!」
肩を揺さぶられながら名前を呼ばれ、ヒロトは目を覚ました。
荒くなった息を整えながら辺りを見回すと、薄明かりの中イナズマジャパンのメンバーが心配そうに自分を取り囲んでいた。