3号
□キミにありがとう
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「オレ、まさか3年後の自分がこんな風になってるなんて思っても見なかった」
「オレもだ。たくさん出来事があったからな。息つく暇も無いぐらいに」
自分で言っておいてその通りだな、なんて納得してしまった。
陸上部に居た頃はそうでもなかったけど、サッカーに携わるようになってからは特にそう思う。
「風丸、ありがとな」
「え?」
一体何のお礼なんだ?
脈絡も何も無い言葉に驚いてグラウンドから円堂に目線を移すと、円堂は笑っていた。
「あの時風丸が来てくれたから、オレは最後まで雷門中サッカー部に居られたんだ」
そこまで言われて円堂が何のことを言っているが分かった。
それはオレたちが2年生になったばかりの頃、弱小サッカー部に突き付けられた廃部を懸けた帝国学園との練習試合。
その時点で在籍していたのはたったの7人で、何とか11人集めようと円堂は駆けずり回っていた。
その時だ、オレがサッカー部に入ろうって決めたのは。
「それはオレのお陰じゃなくて、円堂が部員集めを頑張ったからだろ?」
「違うって。風丸が入ってくれたからだよ」
丸い目でじっと見つめられ、困ったオレは頬を掻く。
この顔をしている時の円堂は、こちらが自分の意見に同意するまで一歩も引かない。
「…円堂の考えで行くなら、オレはきっかけを作っただけだよ。鉄塔広場でサッカー部に入るって決めた時、染岡も半田も壁山も全員居ただろ?あいつらだって本当はサッカー続けたかったんだよ。その言い出すタイミングの引き金が、たまたまオレだっただけだ」
そう言ってな?と優しく肩を叩くと、円堂は腕組みをして渋々頷いた。
これは完全に納得がいっていないな。
「じゃあ、オレからも。ありがとう、円堂」
「へ?」
話題を切り替える為にオレがそう言うと、円堂が気の抜けた返事をして、キョトンのした顔でオレを見た。
きっと、オレもさっき同じような顔してたんだろうな。
「何のありがとうだ?」
「オレが道に迷った時、手を引いて出口に連れて行ってくれたのはいつも円堂だ。オレが何も言わなくても、おまえは“大丈夫”って励ましてくれた」
オレがそう言うと、円堂は目線を外して複雑な表情を浮かべた。