1号
□中一と小六の論争
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「立向居!虎丸!」
キキーッとブレーキをかけてお目当ての部屋の前で止まった。
その騒々しさに、部屋の中に座っていた豪炎寺が驚きの表情で振り返る。
「あれ?久遠監督は居ないのか?」
「氷枕を作りに行っている。どうやら入れ違いになったみたいだな」
そう言いながら豪炎寺は円堂と秋の前に立った。
円堂はそっか、と素っ気ない返事をして豪炎寺と目を合わさずベッドに向かう。
豪炎寺は円堂が放り投げたスポーツウォーターのボトルを上手くキャッチした。
「どうしたんだ?何があったんだよ?自主練してて倒れたって聞いたけど…」
円堂が二人の近くに駆け寄り座り込んで、交互に顔を見つめる。
二人の顔色はあまり良くないが、身体を起こす事が出来ているので心配は無いようだ。
「……オレが悪いんです」
しばらくの間立向居も虎丸も口をつぐんだままだったが、観念したように小さな声で虎丸が一言そう呟いた。
「いや、オレの方が悪いんです。…あれは、夕食が終わったあとの話なんですけど…」
それに続くように立向居が経緯を説明し始めた。
−−−−−
「立向居さん」
食堂に居づらくなった立向居は、一度部屋に戻って気持ちを落ち着かせようと足早に階段を登ろうとしていた。
その時、ケンカ相手の張本人、虎丸に呼び止められた。
二人の間に気まずい空気が流れる。
「何…かな?」
一瞬無視しようと思ったがそこは優しい人柄の立向居、一つため息をつくと虎丸を見つめる。
「今から勝負しませんか」
「勝負…?」
「はい。オレと立向居さんとで」
虎丸の意図が分からない立向居は首を傾げた。
虎丸は真剣な表情で立向居に近付く。
「オレと立向居さんが勝負して、勝った方の尊敬してる人が凄いって事にするんです」
「え…?」
立向居は内心呆れた。
何故自分達の勝負で円堂と豪炎寺の優劣が着くのか。
そんな事はどう考えてもおかしい。
「あのさ、そんな勝負」
「逃げるんですか?」
「…何だって?」
虎丸の言葉にピクッと立向居の眉が動いた。
その反応を見た虎丸は腕を組み、フッと笑みをもらす。
「だってそうでしょう?勝負の内容以前にオレに負けるのが恐いからそんな事言うんですよね?それはつまり逃げるって事ですよね?」
その言葉に、流石の立向居も遂に堪忍袋の緒が切れた。
「…誰が逃げるなんて言った?分かった!その勝負受けて立とうじゃないか!」